それは紙一重 (ページ34)

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その後、顔の熱がバレたくなくて、

お店に着くまで嘉くんの少し後ろを

歩いていたので、あまり会話はないままで、ちょうど

私たちが到着する頃には出入り口からゾロゾロとみん

なが出て来るところだった。

力「あ！ちょうど戻ってきた！」

将「酔いはさめたん？」

「最初っからそんな酔ってないってば！」

あ、お金！と、財布を取り出そうとしたら、すかさず

アオイさんに肩を組まれる。

アオイ「嘉将の分も、今回はあたしの奢りってこと

で。」

「えっ？！」

嘉「いいんですか？！」

リッキーと未来が横で、ずるーい！と騒いでいるがア

オイさんはそれには触れずに、私に耳打ちをして来

た。

アオイ「そのかわり、頑張んなさいよ？」

「ちょっ！アオイさん、シー！」

私は慌てて、ニヤニヤするアオイさんの背中を押し

て、先に歩いてるわ！！と一足先に歩き出した。

アオイ「なになに、進展あったとか～？」

ほろ酔いのアオイさんは、少しふらつきながらも歩き

ながら私に肘打ちをしてくる。

「二人にしてくれるキッカケ…ありがとうございま

す。でも…特にこれという進展は…、」

アオイ「ま、はなから期待はしてなかったけどさ。」

「はいぃ？！」

コントのように私は足がガクッとなるが、また肩を組

まれ、

アオイ「カナ…あの子本気っぽいよ？あんたたちが出

てった後、心ここに在らず状態だったし。」

カナちゃん…やっぱり嘉くんのこと…。

アオイ「強敵現る、ね。」

アオイさんの肩越しに振り返れば、少し後ろを歩く嘉

くんの隣には笑顔のカナちゃんがいて、さっきまでの

ドキドキはどこへやらで、胸がズキッと鳴る。

嘉くんの隣を常にキープ&マークされていて、今まで

とは少し変わった状況。

そんな中で、私は嘉くんを振り向かせる？

しかもライバルは可愛くて、非の打ち所がないカナち

ゃん…。

無理だ…完全に。

同じ土俵に立つだけで、あしらわれるくらい勝ち目の

ない試合みたいなもん。

帰り道の新幹線では、みんな爆睡する中、一人真っ黒

に流れる景色を眺めてループする考えにずっと付き合

わされた。

この瞬間も、嘉くんの一番近くにいるのはカナちゃん

で…。

これが本当の「好き」って気持ちなんだって、窓に反

射してうつる自分の頬に、一筋の涙が流れた瞬間、嫌

でも気付かされた。