それは紙一重 (ページ33)

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嘉「入らないの？」

コンビニの出入り口近くにある公衆電話の

側にスッと寄れば、不思議な顔で聞く嘉くん。

「大丈夫！買うものないし、ここで待ってる！」

ほんとは嘉くんと少し離れて、このドキドキとうるさ

い心臓を少し落ち着かせたかった。

少し間を置いて、すぐ戻るから、と足早に入って行っ

た嘉くんは、言葉通りすぐに戻ってきた。

嘉「はい、これ。」

「えっ…、」

大きな手から差し出されのは、ホットのお茶が入った

ペットボトル。

嘉「Aはいつも缶コーヒー飲んでるけど、さすが

にビールとコーヒーのちゃんぽんは…と思ってさ。」

もう夜は寒いしね、と言いながら私の返事も待たず

に、お茶を持たせた。

「あ…ありがと…。」

あったかい。

手に伝わるお茶の暖かさよりも、嘉くんからの優しさ

が、あったかい。

お茶を見つめて歩き出さない私に気づいたのか、数歩

先で振り返った嘉くんに、思い切って声をかける。

「嘉くんっ！」

嘉「ん？」

「…あー…えっと…、やっぱなんでもない。」

嘉「え？笑」

自分何をしてんだよ、まったく！！

何が言いたいか特にまとまってなかったけどさ！

でも…なんとなく、嘉くんを呼び止めてこのまま時間

が止まってしまえばいいのに、って思ったんだ。

カナちゃんのいるあの場所に戻るんじゃなくて…。

嘉「A？どしたの？具合でも悪いの？」

そんな贅沢なことを考えていた私の方に戻ってきたか

と思ったら、少し冷たい嘉くんの片手が私の額に触れ

る。

「っ！」

嘉「んー、熱はなさそうだね。」

だけど、私はあまりにも突然のことで思わず反射的に

その場からのけぞって、数歩後ろに下がる。

「あっ…、えっと…その…、」

触れられた所に、一気に身体中の熱が集まり沸騰しそ

う。

嘉「あ…ごめん。」

だけど嘉くんは少し驚いたような顔をした後、謝って

来た。

「こっ…こっちこそ、ごめん！私バカだからさ！風邪

引かないんだよね！」

顔が赤くなっていることを隠したいのもあり、取り繕

うように言えば、少し眉毛を下げて、みんな待ってる

し行こっか、と歩き出して行った。