それは紙一重 (ページ32)

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だけど私の目の前に立つ嘉くんの

後ろでは、カナちゃんが何か

言いたそうな顔でこちらを見ていることに気づく。

「ほんと大丈夫だから！まだ酔ってないし、それにほ

らっ…まだ私食べてるし！」

竜太たちのせいで、さっき食べ損ねた最後の一枚の牛

タンののったお皿を指させば、

アオイ「もーらいっ！」

「あっ！！ちょっとアオイさん？！」

横から手が伸びてきたかと思ったら、私の最後の一枚

の牛タンはあっという間にアオイさんの口の中へ。

流「今日は泊まりじゃないんだし、帰り道で介抱とか

まじで勘弁だから。」

「なっ…？！」

じゃヨッシー頼むわ、と流星はひらひらと手を振る。

仮に酔ってしまってても介抱してくれないなんて、薄

情奴だな、流星は！！

ま、流星は前回もそそくさと帰ったらしいしな…。泣

嘉「あ、そだ。俺ちょうどコンビニ行きたいから一緒

行こ？」

嘉くん…優しいなぁ。

今のは絶対、私に気を使って自分も外に用事あるフリ

をしてくれたんだろうな…。

「わ…わかった…。」

その優しさを踏みにじるのもどうかと思い、私はしぶ

しぶ立ち上がり、嘉くんと一緒にお店を出た。

コンビニまでの道、分かるの？と、隣を歩く嘉くんに

聞けば、この辺は昔来たことあるから少しは土地勘が

あるんだとか。

「嘉くんは、この地で生まれ育ったんだもんね。」

嘉「そうだねぇ。今日も、おかえりってファンの人た

ちに言われて嬉しかったなぁ。」

そう言う横顔は今日、たくさんのファンの方たちから

「おかえり」って言われている時の嬉しそうな顔と同

じだ。

「私も嘉くんの地元で、またこうやって成長した姿を

お披露目できたのはすごく嬉しかったよ。」

まだデビューしてそんなに時間もたってないのに、結

成したばかりの頃、同じ場所に立っていた七人とは思

えないほど彼らの背中は確実に大きくなってきてい

る。

嘉「良いマネージャーに恵まれたからかもね。」

最近見ることの多くなった、嘉くんのいたずらな笑

顔。

私はこれに、めっきり弱くなった気がする。

それからは、たわいもない話しをしていたら、あっと

いう間にコンビニに着いてしまった。