それは紙一重 (ページ30)

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アオイ「なに、それで酔って潰れて

送ってもらって、終わり？」

アオイさんは売店で買ったのか、食べようとしたチョ

コを片手に持ったまま目を丸くする。

「…えぇ…まぁ…はい…。」

アオイ「あんたバカなの？」

「う…、」

カナちゃんの送別会で、やらかした私を送ってくれた

嘉くんとの一部始終を話し終えた後、アオイさんのカ

ウンターが飛んできた。

アオイ「せっかく二人になれたチャンスを棒に振ると

は…。」

やれやれ…と言わんばかりにため息をつかれる。

「でっでも、カナちゃんの方に行きたかったよねって

言っても否定されなかったんですよ…。」

アオイ「そんな一語一句に悲観的になってたら、あっ

という間にあの子のものになっちゃうよ？」

アオイさんはそう言って、後ろの座席を顎で指す。

そーっと後ろを覗いてみれば、列車の走る音で聞こえ

ないけれど、楽しそうに話しているのが伺えた。

もう完全、私の出る幕ないじゃんか…。

「やっぱり私には次の恋なんて、早すぎたんです

よきっと…。」

アオイ「…仕事ん時は協力できないけどさ、他の時で

なんかあったら、あたしはAの見方するから。だ

から元気だしなっ！」

そして肩を抱いてくれたアオイさんは、ほらっこれで

も食べな！と、手に持つチョコの箱を俯く私の顔の前

に出した。

ー福島ー

それから無事にラジオ収録とリリースイベントを終え

ることができたメンバー全員含める私たちは、福島な

らではの牛タン専門店に来たのは良いんだけど…、

未「牛タンうんまっ！」

カナ「ん～ほんとだぁ！」

力「カナちゃんに俺の愛と言う名の、牛タン一枚あげ

ちゃうっ！」

カナ「いいんですかぁ～？嬉しい～！」

アオイ「力也あいつ、アホか。」

「アオイさん、日に日に言葉が刺々しくなってます

よ。苦笑」

通路を一つ挟んだテーブルに座る、私とアオイさんは

ビールのジョッキ片手にしらけた目でリッキーを見

る。

もちろん、今も嘉くんの隣をキープなわけで。

あ、ほらまたボディタッチ付きの上目遣い。

「はぁあ～～。見てらんない、やってらんない。」

私はジョッキをドンッと置いて、目の前の牛タンを見

つめた。