それは紙一重 (ページ17)

今日:14 hit、昨日:4 hit、合計:78,500 hit

１７ページ17

竜「えっ？！ちょっ…まだ食レポ

してたんすけど！！」

アオイ「はいはい、時間ないんだからもう行くよ

ー。」

先程と同じく、スタスタと歩き出すアオイさんを追い

かける竜太の背中に、

「見たかったな～竜太の食レポ。笑」

わざとらしく惜しんで言ってやったら、次は見てろ

よ！と指を刺されて前を歩いて行った。

二人の背中を追うように歩き出した、私と嘉くん。

嘉「ねぇ。」

「んー？」

飲み歩きしていたストローを口から離して、横を歩く

彼を見れば、

嘉「俺、まだAの味見してない。」

そして、目の前に嘉くんが私の容器のストローを吸う

横顔のドアップが。

しかも、容器を持つ私の手には、嘉くんの片手が重な

った。

「っ！！」

嘉「ん。こっちの方が美味しいかも。」

舌をチラッと見せながら、味見ができたからか満足げ

に笑顔で前を歩いて行く嘉くんは立ち止まる私に気付

いて、数歩先で振り返った。

嘉「A？どうしたの？」

「えっ？！いやっ！なっ、なんでもない！！」

さっきまで私が立ち止まって出遅れていたのに、そう

言って足早に彼を追い越して、更に前を歩く二人の元

へ駆け寄る。

竜「あ、A遅せぇよ…ってなんか顔赤いけど？」

アオイ「あら、どうしたの？」

二人は振り返るなり、私の顔を見て心配そうに覗き込

む。

「小籠包食べたすぎて、興奮しちゃったみたい！」

笑ってごまかせば竜太には、食い意地張ってんな～と

また、からかわれてしまったけどそんなの今はかまっ

てられなかった。

だって胸が…心臓がうるさいくらいドキドキしてるか

ら。

その後は、予定通り四人で熱々の小籠包をこれでもか

ってくらい食べてホテルに戻った。

だけど、それから帰国するまで終始、嘉くんの存在が

私の視界の中で色濃く写り、何度自分の目を擦ったこ

とか…。

タピオカミルクティーを横から味見された時の、嘉く

んの香水の匂い。

至近距離の嘉くんの横顔。

そして嘉くんが近くに来る度、このうるさい心臓。

帰国した今も、それらは変わらない。

「…だぁっ！！！」

寝る体制にしていた体を勢いよく起こして、ため息ひ

とつ。

「はぁ～…寝れない…。」

なんなんだ、いったい…。