それは紙一重 (ページ14)

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「…というわけでして…、」

かくかくしかじかと、飛行機の中で隣に座るアオイさ

んに一部始終を話せば、

アオイ「はっ？！なにそれっ？！ちょっと今からソイ

ツんとこぶん殴りに行って来るわ！！家どこよ？！」

「アオイさん！今は空の上ですから！笑」

立ち上がろうとするアオイさんを必死になだめると、

アオイ「あ、そっか。ごめんごめん。笑

ま…、でも早めに終われてこっちは一安心だわ。」

ボスンッと背もたれに寄りかかり、安堵の様子なアオ

イさん。

「すいません…。余計な心配かけて。」

ペコリと頭を下げる私。

アオイ「可愛い後輩だもの、良い恋愛してほしいじゃ

ん？だから、余計な心配かけたとか思わなくていーの

っ。」

そう言って、悪戯に笑う。

「…でも、なんかスッキリしたんです。肩の荷が降り

たみたいな…。ムカつく～って気持ちもあったけど、

彼氏を取られて…ってそういう怒りでもなくて…。悲

しかったけど、涙ひとつ出なくて…。」

アオイ「Aの中では好きって気持ちよりも、私が

なんとかしなきゃっていう義務になってたから、涙も

出なけりゃ、肩の荷も降りた気分になったんじゃな

い？それにきっと、その怒りや悲しみは浮気されてた

ことに対してじゃないんだよ、きっと。」

「そしたら何に対して…、」

私は身を乗り出して、隣のアオイさんを見る。

アオイ「彼氏に対して散々つくしてきたのに、それを

裏切れた気持ち…とか？」

「裏切られた…気持ち…、」

アオイ「好きで裏切られたショックというよりも、自

分が努力して来たことが無駄だったってことがショッ

クで悲しかったり、怒りがこみ上げて来たんじゃない

のかな～って。」

確かに、それは一理あるのかもしれない。

あの時、彼氏のことが好きで好きで堪らなくてショッ

クを受けたというよりは、あの現実が馬鹿馬鹿しくな

って、今までの自分ってなんだったんだろうって。

わがまま言わないで、彼氏の思うように動いていた自

分も、目の前で慌てて、まともな言い訳もできない彼

氏も、全部馬鹿らしく思えたんだ。

確かに言われてみれば、自分を押し殺して言いなりに

なっていた時間が無駄になった…それがショックだっ

たのかもしれない。