それは紙一重 (ページ12)

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アオイ「彼氏の好きな所、

５個あげてみて。」

「えっ？！好きな所…好きな所…？」

彼氏の好きな所…って、どこ？

あれっ？私、なんで答えられないの…？

アオイ「次。彼氏の癖は？」

「癖っ？！えーと…、」

彼氏のよくする癖って、なんだっけ？

その瞬間、嘉くんの下唇を少し噛んで笑った顔が脳裏

によぎる。

そう、それは嘉くんの少し恥ずかしい時の癖。

って、違う違う！！

嘉くんじゃなくて、彼氏の癖を思い出さないとでし

ょ！！

考えるのと、嘉くんのことを振り払うので頭を横に振

っていたら、

アオイ「彼氏の好きな所も言えない、一年も付き合っ

てるのに、癖も思い出せない。…もうこれは、依存だ

よ依存。」

アオイさんは、私をまっすぐ見る。

「依存…？私が…彼氏にですか…？」

アオイ「そう、依存。そんな簡単なことも言えないな

んて、それって彼氏にもう気持ちはないってことでし

ょ？今のAは彼氏に対して、一年も付き合って来

たし～とか、ただ彼氏っていう存在を切れないだけに

になってると思う。」

本当に彼氏のことを好きなら、答えることができる簡

単な質問のはずなのに、何一つ浮かばなかったことに

自分でも衝撃を受けた。

アオイ「それに…彼氏のそのルーズな所とか変えてみ

せるってAは散々言って来たけど、たぶんそれ

は、本人が変わる意思がないと変わらないと思う。

Aが変えるんじゃなくて、彼氏が自分から変わる

って思わないと…。」

アオイさんの言葉が、胸に突き刺さる。

今まで私が正しいと思ってたことが、全てひっくり返

された感じ。

しばらく固まっていたら、楽屋のドアが開きいつも通

り、みんながゾロゾロと入って来てハッとする。

アオイ「意地悪で言ってるんじゃないからね。」

アオイさんは前と同じように、私の肩をポンッと叩

き、おはよ～とメンバーにも声をかけて持ち場に戻っ

た。

嘉「…A？」

「えっ…？」

テーブルの向かいから嘉くんは、荷物を置きながら心

配そうに顔を覗き込んでくる。

嘉「大丈夫？なんか…ボーッとしてたから。」

「うっ、うん！大丈夫！！」

ならいいけど…と、嘉くんはそれ以上聞いてこなかっ

た。

だけど私の中ではもうすでにその時には、再スタート

の合図を待ちわびていたのかもしれない。