それは紙一重 (ページ1)

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ダーリンごめん、今日会えなくなった。

携帯の画面を見て、固まる私。

そこには、久しぶりに会えるはずだったピンク色のス

ケジュールが、真っ白に消えたのを表している。

私はその場に立ち尽くし、空を見上げれば…、

嘉「綺麗な青空だった。って言いたいとこだけど、こ

こ楽屋ね？」

「いっ、いつからそこに？！！」

んー、2、3分前？と、私の近くにゆっくりと腰を落と

す加納嘉将こと、嘉くん。

なんで彼がここにいて、私もここにいるかっていう

と、遡ること約一年前。

もともと他の事務所でマネージャー関係に携わってい

た頃、たまたま上司に連れていかれて行った会合で、

HIROさんに出会い、その後引き抜かれたのだ。

大した取り柄もない、めちゃくちゃ営業の成績も良い

わけじゃないし、むしろ人並みだったし…。

それでも、私を引き抜いてくれたHIROさん曰く、私

に担当させたいグループがいる、と直感的に思ったら

しい。

それからあの強い眼差しを信じて着いて行けば、世界

を目指す彼等のマネージャーを任されて…、今に至る

ってわけ。

嘉「例の彼氏？」

嘉くんはペットボトルのお茶をクィッと飲みながら、

私を見上げる。

「あー…うん。久しぶりに会えると思ってたんだけ

どね…。ま！しゃーなしだっ。」

私は携帯をヒラヒラさせて、鞄にしまった。

歳もそう変わらない私たちは一年も経てば、お互いの

プライベートなことも話す仲となり、たまにこうやっ

て愚痴ったり、惚気たり。

嘉「…付き合ってどれくらいなんだっけ？」

「んーっと、一年くらいかな？」

嘉「じゃ、ちょうど俺らと仕事するようになる時から

ってわけね。」

嘉くんはどこか遠くを見るような目で、言う。

「そうだね。まったく…忙しい彼氏を持つと、大変

ね！」

私は嘉くんの向かいに座り、手帳を開いて今日一日の

スケジュールを確認するけれど、頭の中は一つのこと

でいっぱい。

会えなくなった理由…、それすらも説明してくれな

い。

なんで会えないの？

ドタキャンするほどの用事ってなに？

だけど、私の脳内はチャンネルを変えたかのように、

すぐに切り替わる。

違う…、きっと忙しいんだよ。

それか、急な仕事が入っちゃったとか。

何にせよ、彼を信じなくちゃ。