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5 隠れて…。 ページ5

春風に、夏の匂いが少し乗ってきた頃。
 嫌好と禊は教室の一番後ろにいた。
「…ねえ、何でこんな後ろにするの?」
「禊のメガネ姿が見れるから。」
「意味わかんねぇ…。」
 禊はため息交じりに眼鏡をかける。
(メガネ萌えメガネ萌えメガネ萌えメガネ萌えメガネ萌え…!!)
(嫌好、また変な事考えてるな…。)
 禊が目を細める。
 嫌好は禊に当てられたターゲットマークに気付く。
「ハッ!?」
 あたりを見回すが、それらしきものが見当たらない。
(気のせいかな…。あー、禊可愛い。)
 一人の女子が淡いピンクのノートから目だけ出す。
「…危なかったぁ…。」
 通路を挟んだ、禊の隣の席に座る女子。
「はぁ…今日もかっこいいなぁ。私の事なんて覚えてないだろうなぁ…。なんせ、高校三年間ずっと地味で目立たなかった芋女だもの。バレンタインや何やらのイベントは一切触れずに、ガリガリ勉強してたからなぁ。思い切って前髪切ってみたけど、私の顔知ってる人全くいないからなぁ。」
 女子はしばらく考えて、
「…それはそれでいいかも!ギャップ萌えってやつ?そうよ。高校の時はあんな芋女だったけど、実はこんなにも可愛い子だった!あの時告白しとけばよかった!って、後悔させるのよ!」
 女子はただ一人、燃えるのであった。
 嫌好が禊の袖を引っ張る。
「ん?」
「ねえ、…したい。」
「何を…!?」
「ん…。」
 嫌好は口を尖らせる。
「えー…。」
 禊は困惑する。
「どうしても今じゃなきゃダメ…?」
「ん。じゃないと後でトイレで襲う。」
「通報するぞコラ。」
 禊はため息をついて、頭をかく。
「ったく…。」
 シャーペンを置き、眼鏡を机の上に置き、教科書を立ててその陰に隠れる。
「んっ…。」
 禊は困ったように顔を近づける。
「えっえっ、何してますの?」
 女子は双眼鏡で見る。そして、思わず双眼鏡を落としそうになる。
「…な、何ですの、この気持ち…?」
 ただ、悪い気は全くせず、むしろおいしい思いをした気分がした。
「…〜〜〜!!」
 女子はガッツポーズをする。

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作者名:聖 永遠/作者 字 | 作成日時:2016年5月1日 4時

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