楔荘が楔じゃなかったら。 (ページ3)

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3　寝起きページ3

春の日が、禊の部屋に差し込む。
　アイマスクを着けて寝ている禊は、もぞもぞ手を伸ばしてアイマスクを少しめくる。
「ぅお…。」
　雨戸は閉めたものの建物が少々古い為、隙間からの日光に目が痛い。
「んっ…はぁー…。っこらしょっと…。」
　禊は寝癖で面白いことになってる髪をもそもそ触る。
(今日は…土曜か。で、休みで…。)
　腰のあたりを触って、昨晩の事を思い出す。
(あー、またやっちった。もうしないって決めたのに…。)
　床に落ちているシャツと下着を身につけ、風呂場に向かう。
「ダルっ…体重い…。」
　シャワーの蛇口をひねる。水が頭から襲い掛かる。
「うぁ冷てぇっ!!」
　嫌好が勢いよく上体を起こす。
「禊…？」
　目がショボショボして、体を動かせない。
「うーぁー…。」
　そのまま後ろに倒れる。
　シャワーを浴びて禊が戻ってくる。
　ベッドに乗り、嫌好の側に這い寄る。
「おいタコ介、起きろ。」
「んーゃー…。」
「今日こそは荷物の片づけ。」
「んー…？」
　嫌好はめっぽう朝に弱い。目覚まし時計を止めるのに10分はかかる。
　一方、禊は目覚まし時計の音を聞いて3秒で動ける。
　嫌好は枕に顔をうずめ、枕の隙間から横目で禊を見る。
(なま…。)
「おーきーろー。」
　禊は嫌好を揺する。
「やーあー、やめてー。」
　嫌好は禊の腕を引き、自分の腕の中に入れる。
「寒い…。」
「だったらさっさと起きて服着ろ。シャワー浴びて来い。」
「禊、あったかい…シャンプー変えた…？」
「いつも同じじゃないぞ？」
「え？」
「安い詰め替えのを買ってくるから。安売りは常に変わるし。」
「…だから禊の匂いって特定できないんだぁ…。」
「いいからさっさと起きろ！」
「…じゃあおはようのチューして。」
「はぁ!?」
「早く…。」
　禊は少し嫌な顔をしつつ、
「…バカ！」
　軽く唇を重ねる。
「えへへー、目ぇ覚めた。…おはよ。」
　嫌好は柔らかく笑う。
「さっさと起きないと朝食ピーマン炒めにするぞ。」
「それは嫌だぁ！」
　禊は素早く着替える。エプロンを着、襟足の少し長い髪を束ね、手を洗い、食材を切っていく。
「いやー、禊の入った後の風呂は最高だね。」
「真顔で言うな怖い。」
　白い皿に盛られたサラダやパンがテーブルに並べられていく。
「お前…ちゃんと髪拭けよ。」
「禊に拭いてもらいたい。」
「…クズ。」
　禊は見下しながら嫌好の髪を拭く。
「痛い、痛い。」
「ざまぁ。」
　禊はクックック…と不気味に笑う。