楔荘が楔じゃなかったら。 (ページ18)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:1,292 hit

18　好みページ18

「おつかれさまでーす！」
「でーす。」
「おつでーす。」
「っすー！」
　稔はバイトのバーに入ると、準備中の店員の声が返ってくる。
「今日は多分客少ないと思う。」
「あ、禊子ちゃん。そっか。じゃあちょっと暇だね。」
「暇じゃないわよ。その間に会計とか、色々雑務があるんだから。」
「表子さん。」
「邪魔だ。」
　裏拏が表子を押す。
「ちょ、チビのくせに！」
「黙れ乳女！」
「ハァ!?」
「アァン!?」
「ま、まーまー、落ち着いて…。」
「うるせぇぞ女ども。」
　護が間に入る。
「乳はデカすぎても大きすぎても意味ないよね。やっぱ形だよね！」
「え、何でこっち見るんですか!?」
「僕は性別自体気にしないかな。」
「殺欺さんはアブノーマルですね…。」
　ケイが稔の肩によっかかる。
「俺は初〇ミクだなー！」
「二次元ですか。僕もですね。」
「なあ、怨はどうなんだよ。」
　一同が一斉に怨を見る。
「私は別に。」
「なにそれ!?」
「怨女の好み無いの？」
「あるが、言わない。」
「えー！ケチぃ！」
　ケイが口を尖らせる。
　柱時計の鐘が鳴る。
「おい、時間…。仕事しろ。」
「護に言われたくねぇ。」
　ケイが親指を下に向ける。
　扉のカウベルが軽く鳴く。
「いらっしゃいませ。」
「ハァイ、今日も来たわ。」
　オカマが入って来る。
「藁科！」
「あらケイちゃん。」
　藁科はカウンター席に座る。
「貴方は…新人の稔くんね。やっと覚えたわ。」
「ありがとうございます。」
「ワラシナ、すっかり常連客だね！」
「禊子ちゃん！可愛いわねぇ！どうしたの、そのメイド服？」
「表子が作った！」
　藁科は禊子に頬ずりする。
「おひげ痛い～。」
「藁科ってオカマなん？」
「ちょ、ケイ…！」
　稔は急いで止める。
「失礼ね！私はオネェよ！」
「あ、やっぱり。」
　ケイがペンライトを藁科の顔の前で小さく振る。
　それから少しして、
「稔ー。」
「はい、表子さん。」
「ナッツ切れたー。倉庫から取ってきてー。」
「はーい。」
　店の奥の倉庫に向かう。
「ナッツの袋…あった。」
　棚の上の方にあり、稔は背伸びして手を探らせる。
　怨はグラスが一つ足りないのに気付く。
「…グラスが足りぬ…。」
　殺欺は怨がイライラしているのに気づく。
(なんか…イライラしてんな。)
　怨は奥の倉庫に向かう。
「あと、ちょっと…！」
　稔は袋の端をつかむ。
　が、引き抜こうとしたとき、足がもつれて後ろに倒れそうになる。
「おわっ!?」