【完結】書店員と恋１ (ページ45)

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「……は、」
「あ～よく寝た～～」

数秒の後にバッと首元を押さえ振り返ると、スルリと腕が解かれた。起き上がった彼は、ぐぅ、と大きな伸びをしている。

「…ジェシー」
「ん？」
「早めに、帰ってもらってもいい？」

……よく働かない頭は、とりあえず一人になることを選んだらしい。起きて早々帰すのは少し申し訳ない気もするけれど、……だめだ、頭がついていかない。一旦考えるのはやめよう。

さっさと帰ってもらって、私はシャワーを浴びる。熱めのやつ。

「へへ」
「……なに」

あぐらでベッドに座りながら、こちらを見て笑うジェシー。例えるなら…にんまり、かな。

口角が上がりきっている彼はとても楽しそうで、……けれどその口から発された言葉は、私の思考を完全に止めた。

「その調子で。…俺のこと意識して？」
「……は？」

ふんふん、なんて鼻歌を歌いながら立ち上がり、おもむろに洗面所へ向かう彼を目で追う。「寝ぐせすげぇ！」そう聞こえたと思ったら、戻ってきた彼がラックにかけてあるバケットハットを手に取った。

「じゃ、ジェシーくん帰りまぁす」

「帽子借りてくね～」爆発している派手な髪を黒のバケットハットで隠し、昨日寝落ちたままの服装で去っていく。

また来るね、なんてパタリとドアが閉められても、しばらくその場から動くことができなかった。

◇

「……Aさん、顔怖いですよ」
「え、嘘」
「眉間のシワすごいです」

翌日出勤すると珍しく、お昼から沙織ちゃんも出勤していた。「なんかありましたか？」そう聞いてくれる彼女だけれど、昨日の出来事を赤裸々に話すわけにもいかないし…「まあ、ちょっとね」言葉を濁す。

「松村さんですか？」
「いや、違うん」

だけど。そう言いかけて、止まった。

「……待って、沙織ちゃん、知ってたっけ」
「知ってるも何も、この前いい雰囲気で話してたじゃないですか」

「Aさんが友紀さん以外の人と一緒にいるって、ちょっとざわついてましたよ」「…私って友紀とセットだと思われてるの？」「……割と？」「そうなんだ…」今度から、少しは離れて行動することにしよう。