【完結】書店員と恋１ (ページ29)

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「それにまた、前みたいになったら」
「でもジェシー、聞いて？」
「…」
「頑張りたいって言ってんだよ、Aが」
「それは…」
「だめだったときに支えるのが、うちらの役目じゃないの？」

「だって……親友、でしょ」とつとつと、諭すように話していた友紀が最後に、少しだけ気恥ずかしそうにした。

「ジェシー…」
「……」
「……ああもう、」

「勝手にすれば！」そう、不貞腐れたように言う彼。けれどその掌は私の手に重なって、一度だけぎゅう、と強く握られて。

「ありがとう、ジェシー」彼の目を覗き込んで言えば、「……ずるいよ、Aは」と眉を下げた。

──20分ほども休めば、耳鳴りも目眩もすっかり落ち着いていた。
「戻ろうか」そう言った友紀とジェシーに挟まれて、みんなのところへと向かう。

「…なんか言われるかな」
「松村さんに『誤魔化しといて』って言っといたし、多分大丈夫じゃない？」
「ならいいんだけど…」

人の注目を集めるのは、あまり得意じゃない。

そうして先ほどまでの場所に戻ってみれば、驚くほど何もなかった。
きっとうまく誤魔化してくれたんだろう。そう安心するのと共に、視界の端っこに彼の姿が見えて、チクリと胸が痛む。

ひとりでベンチに腰掛けて、ボーッとしているような、彼。

「……行ってこようかな、私」
「…」
「ていうか、行かないとだよね。今」
「……うん、行ってきな」

ポン、と背中を押されて、足を踏み出した。

「──松村さん」
「Aさん？」

そっと近づいて声をかければ、柔らかそうな黒髪がふわりと揺れた。

「体調大丈夫ですか？」
「はい、すっかり。…すいません、話の途中だったのに」
「いえ、それはいいんです」

手を振って、大丈夫だと伝えてくれる彼。
そんな彼に「隣座ってもいいですか？」そう問えば、驚いたような顔をした。

「あ、ぜん、全然！大丈夫です！」
「失礼します」

横にずれてくれた松村さんの隣に、少しだけ間隔をあけて腰かける。「少し話したいことがあって」と伝えると、「なんでしょう」と首を傾げた。

「……急になんだよ、って思うかもしれないんですけど、」
「思いません」
「…」
「思いませんよ、Aさんの話なら」

彼はもしかしたら、雰囲気で何かを感じ取ったのかもしれない。
柔らかく揺れるその瞳が、「大丈夫」と言っているようで。……ひとつ、息を吸う。

「大学生のころ、」

◇