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北斗と私は、社会人として生き始めた。
最初の数か月は、新しい環境に馴染むのに必死で。連絡はとるけど、無理はしない程度。会うけどそれも、無理はしない程度。
「そこが一番楽しい時期なのに！」って話を聞いた香耶は嘆いていたけれど、あの頃の私たちにはそのやり方がよく合っていた。
少しずつ仕事に慣れて、お互いなんとなく余裕が出てきて。その頃からなんとなく、金曜が終わればどちらかの家に行くのが習慣になった。
最寄りの駅で待ち合わせをする。
スーパーに寄って、食材を買う。
帰ったら、家主がご飯を作る。代わりにお皿を洗うのはもうひとりの方。
「今日はなに見る？」
「そうだなー……あ。久々に、ショーシャンク見たいかも」
「重いねえ(笑)」
いいよ、って言う北斗は、私が見たいと言うものを否定しない。しっかり最後まで見て、それでだめだったら「俺には合わなかった」って言う。そういうところが、とても好きだった。
同じベッドで寝ることも、肌を重ね合わせることも。それはふたりにとってだんだんと、当たり前の幸せになっていく。
朝起きて、日の光で眩しそうに北斗が歪ませる顔も。私にとっては大切な当たり前で。
そんな日々が続いて。
付き合い始めて、1年が経った頃。
「一緒に住もっか」
突然、北斗が言った。
「…え？」
「や、だってさ。家賃ひと部屋分かからなくなるんだよ？」
光熱費も減るし、食材余らせることもなくなるだろうし。会社からちょうど半分くらいの場所にすれば、通うのだって困らないし。
そうやって北斗がひとつずつ合理的な話をしていくのに合わせて、「確かにね」「その通りだね」って相槌をうつ。そうしたら彼は少し嫌そうな顔をして口を閉じた後、「…あのさ」って。
「彼氏がこんな…現実的な話ばっかりするの。嫌じゃないの？あなた」
「え？現実的なのは大事なことだよ」
「……」
はああ、と盛大なため息をつく。
「…わかった。じゃあ今から俺が言うことは聞き流して」
「んん？」
「……Aとも、毎日一緒にいられる」
だから、って言った北斗に、次の瞬間には抱き着いていた。「…こら、苦しいでしょ(笑)」困ったように北斗が笑う。けれどそれを無視して、ぎゅう、ともう少しだけ力をこめれば、同じだけの強さでぎゅう、と抱きしめられた。
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ぬめ娘(プロフ) - 初めまして🙇♀️みそ様の作品がとても大好きなので思わずコメントさせて頂きました✨本当に文章や言葉選びが素敵でどの作品も2、3周拝見いたしました🥰これからも勝手ながら影から応援させていただきます。 (2022年6月27日 23時) (
レス) id: 9b0e8af300 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みそ
| 作成日時：2022年6月4日 21時
