【完結】淡く柔い鎖 (ページ11)

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2.

夏休みもあと少しという頃。
奈緒から、『Aまじごめん、明日、宿題手伝ってほしい』って、深刻な絵文字がついたLINEが送られてきた。

…終盤までやらないタイプだよね、あの子は。
なんとなく想像がついてた展開に、思わず笑いが漏れる。

『いいよ(笑) うちでやる？』
『え、Aんち！？行きたい！』
『わかった。親どっちも仕事だし、何時からでもいいよ』

そう送った翌日。

ピンポン、と鳴らされたインターホンに返事をして扉を開けるとそこには、

「あ、A！やっほー！」
「やっほー」
「…やっほー」
「…………え？」

奈緒の後ろに立つように、田中くんと松村くんの姿が見えて目を疑った。
…誘ってない。私は。

お互い数秒間沈黙して、…私が驚いてることに気づいたのか、奈緒が口を開く。

「…連れてきちゃった？」
「……事前連絡、欲しかったかな(笑)」
「わー！ごめんA！」

パン、と手を合わせて頭を下げる奈緒に苦笑い。

…迷惑、ってわけじゃないんだ。
それは全然、違うんだけど。

フルーツタルト、2個しか買ってないなあ、とか。
4人で使えるほど、テーブル広くないなあ、とか。

……本当は。彼らとは少し、距離を置こうと思っていたから。だから、突然この場に現れた二人の姿に戸惑ってしまった。

「…どうぞ、上がって？」
「お邪魔します！」
「お邪魔しまーす」

階段上がって右の部屋だから、って言えば、そそくさと上がり込んでいく奈緒と田中くん。けれど松村くんは靴を脱がないまま、玄関で立ち止まった。

「…迷惑だった、……よね」
「え？…あ、いや全然！ただ、」
「ただ？」
「…ふたりの分のケーキがないな、と思って」

どうしよう、買ってこようかな。そうポソリと呟くと、松村くんは安心したように笑った。

「いらないよ、急に来たのは俺らだし」
「や、でも」
「…と、いうかこれ。バームクーヘン。食べよ？」
「え！…そんな、よかったのに」
「さすがにそこまで図々しくないよ(笑)」

ガサ、と持ち上げられた袋を受け取る。「後で切って出すね」って言えば、「ありがとう」って松村くんが言った。