【完結】淡く柔い鎖 (ページ1)

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高校時代の4月、というのは、新しい生活が始まることに心を踊らせたり、クラス替えで仲のいい人と一緒になれるか不安が渦を巻いたり。今振り返ってみれば、そんな可愛らしいことが世界のすべてを占めていた。

2年生になった私たち。

春休みが明けたその日。教室前の廊下に張り出された名簿から自分の名前を探し出すのに、みんな必死になっていた。

「A！」
「奈緒」

おはよう、ってかけられた声に、挨拶を返す。
「同じクラスだね！」会って早々、奈緒は言った。

「え、もう見つけたの？」
「見つけたよ〜！一瞬だった」
「一瞬かあ(笑)」

文系を選択していた私と奈緒は、ありがたいことに同じクラスだったらしい。D組だよ、って教えてくれる。そこまで順番に見ていくのは大変だっただろうな…って奈緒に感謝。

「ちなみに、」
「ん？」
「樹と北斗くんも」
「え。……そっかあ」
「嬉しそうな顔した！」

んふふ、っていたずらっ子みたいに笑う奈緒の頭を軽く小突く。「いたい！」って、大した痛くもないくせに、冗談交じりに奈緒がプンスカ怒る。それが可愛くてふふ、と笑うと、後ろから「新学期初日から暴力？」って掠れたような声が聞こえた。

「あ、樹！おはよ！」
「はよ。同じクラスだってな」
「そうだよ〜！」

またうるさくなるわー、なんて、私越しに会話を始めた二人。振り向けばそこには、少し色素の抜けたような髪色をした田中くんと、ふわ、と黒髪が揺れる松村くんが立っていた。

あ。パーマ、かけてる。

ぱちり、と松村くんと目が合って、「おはよう」「…おはよ」って挨拶をした。ちょっとだけ、眠そうな声。

「ぜってえ誰か一人はいなくなると思ったんだけど」
「へへーん、離れられなかったねえ、残念でした」
「まじうぜえわこいつ(笑)」

お前だけA組とかだったら面白かったのにな、って意地悪そうに笑う田中くん。
「は？うざっ」奈緒は嫌そうな顔を隠しもせずに、平然と暴言を吐いた。

1年の頃から同じクラスだった私たち。
4人で仲良くなったのは終わりの方で、けれどその頃からすでに、二人はこんなやり取りを繰り返してた。

最初は「大丈夫…？」って心配してたけど、今はもう「勝手にやってて」くらいの気持ちになってる。慣れってすごいなって思う。

「Aちゃんも一緒でよかった。な！北斗」
「…ん、そうね」
「大事な友達だもんな？」
「うるせえな」

お前は一言多いんだよいっつも、って肩のあたりをグーでパンチしてた。