６ ページ6
「最初はやっぱり…ビールかなあ」口角をきゅ、と上げて楽しそうにドリンクメニューを見る慎太郎くん。「あーでも焼き鳥だし……やっぱりビールかなあ」って。多分それ以外、頼む気ないんだこの人。ふ、と笑いが漏れる。
炭酸は、あんまり好きじゃない。
パチパチと弾ける刺激が少しだけ痛いと思う。
けれど、人に付き合って飲むビールは嫌いじゃない。
「私もビールにしようかな」とメニューを覗き込んで言ったら、「お、いいね」って慎太郎くん。飲めるヤツ、って思われたのかも。……うん、別に、お酒も嫌いじゃない。
「おまかせ盛りにしていい？」
「うん、いいよー」
「どれくらい食べれそ？」
「えー…10、本」
「ちなみに、肉。でかい。」
「…」
「んで、他にもちょっと頼む」
「……5本？」
「ん、いいとこじゃない？(笑)」
揚げ出し豆腐うまいんだよね、とか。どじょうの天ぷらなんてのもあるのよ、とか。慎太郎くんにあれこれおすすめされては頼んで、出てきたものをお酒で流し込んで。「おいしい…！」「でしょ？(笑)」そんな会話を挟んだりして。
…なんだか、浮かんでるみたいだなあ。と思ったのは、1時間ほどが経ってからだった。
目の前では、今日会ったばっかりの男の子がニコニコ笑ってるし。テーブルの上にはおいしいご飯がある。さっきまで私はあの会場にいて、あんなに素敵な音楽を聞いていた。
現実なのかな？と思う。
…なにが現実なのかな、って。
「…ね、慎太郎くん、聞いて？(笑)」
口角が上がったまま下がらない。酔っ払いの典型だ。頭はボーッとするし、視界はふわふわしてる。今ならきっと、何を話しても楽しい。たぶん私は、そう思った。
「ん、なに？」
「ふふ、あのね、私昨日ね(笑)」
あ、やめておいたほうがいいかも。って一瞬、冷静な私が止めた気がした。けれど、浮かされた頭にはブレーキなんてものはない。
そのまま、ポロリと言葉がこぼれる。
「フラれちゃったんだ(笑)」
「フラ……え！？」
大きな目だな、と思っていた。けれど、それ以上に慎太郎くんが目を丸くした。「昨日！！？」って驚くその顔がなんだかやけに面白くて、「ふふ」ってまた笑いが漏れる。
「ほんとはね、今日、一緒に来る予定だったの」
「…」
「でも…ねえ、来れる訳ないでしょ？(笑)」
「そう、だね…それは…」
「ほんと、嫌になっちゃう(笑)」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 814人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みそ(プロフ) - ひよりさん» ありがとうございます。楽しんでいただけたならよかったです🙇♀️💚 (2022年5月31日 13時) (
レス) id: 4d278d62fc (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - めちゃめちゃにきゅんきゅんさせて貰いました🤍最高でした😍 (2022年5月29日 23時) (レス) @page24 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
miso(プロフ) - UwUさん» すいません、変換できないようになっていたので直しました💦教えて下さってありがとうございます…！！！！ (2022年4月12日 21時) (レス) id: ecadc79423 (このIDを非表示/違反報告)
UwU - 25の松村さんのセリフ「元の名字」ってどういうことでしょうか？？ (2022年4月12日 0時) (レス) @page25 id: aca0757d01 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みそ
| 作成日時：2022年1月15日 22時
