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「……そっち、行っていい？」
恐る恐る、窺うように聞かれる。ゆる、と首を縦に落とすと彼は静かにソファを立った。膝をついて私の前に座る。じい、と、まるでひび割れたガラスを見るような目で、私のことを見つめる。
と、彼の腕が、私の肩に添えられた。
── そのまま、彼の香りが、体中を包み込んだ。
声を漏らす暇もなく、彼が言葉を紡ぐ。
「Aちゃん」
「…なあに？」
「………全部、抱えこんで。つらかったね」
「っ」
トクン、トクン、と彼の心臓が立てる音が心地よくて、されるがままに彼の腕の中にいたら。……思わぬ言葉に、息が詰まった。
「弱音も吐かないで、」
「…」
「…偉いよ」
「……やめて、慎太郎くん」
このままこの温もりの中にいたら私はもう、戻れなくなると思った。慌てて離れようとするけれど、ぎゅう、と抱き留められて、彼はそれを許してくれない。
「もう、抱え込まなくていいんだよ」
「…」
「今はさ、まだ。俺のこと信じられないかもしれないけど」
「…」
「でもそんなこと忘れるくらい、大切にする」
体に直接伝わってくる、彼の声。じんわりと、…失ったものを満たしてくれる予感がする、声。
視界が滲んで、揺れる。
「Aちゃん」
「…うん」
「……俺と一緒に、生きよう？」
…それは。重たくて。けれど、何よりも欲しかった言葉だと思った。いつか終わる関係なんかじゃなく、生きることを、共に。
「── っ」
一筋涙が零れたら、もう止まらなかった。う、と漏れた声を押し殺せば、「我慢しないで」って背中をさすられる。…ぎゅう、と包まれる体が熱い。
子どもが、毛布に顔を押し付けて泣くみたいに。顔を覆った手のひらじゃ抑えきれなかった声が、彼の首元に吸い込まれる。
彼なら。……慎太郎くんとなら、きっと私は。
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みそ(プロフ) - ひよりさん» ありがとうございます。楽しんでいただけたならよかったです🙇♀️💚 (2022年5月31日 13時) (
レス) id: 4d278d62fc (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - めちゃめちゃにきゅんきゅんさせて貰いました🤍最高でした😍 (2022年5月29日 23時) (レス) @page24 id: 67c39a707a (このIDを非表示/違反報告)
miso(プロフ) - UwUさん» すいません、変換できないようになっていたので直しました💦教えて下さってありがとうございます…！！！！ (2022年4月12日 21時) (レス) id: ecadc79423 (このIDを非表示/違反報告)
UwU - 25の松村さんのセリフ「元の名字」ってどういうことでしょうか？？ (2022年4月12日 0時) (レス) @page25 id: aca0757d01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みそ
| 作成日時：2022年1月15日 22時
