贖罪の塔【オリジナルファンタジー】 (ページ11)

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2.凍てついた月ページ11

「１つ、刃を交えるのもいいかもしれないな。お前とならいい勝負ができそうだ」

「自分の欲のために、戦うの…？断罪人が聞いて呆れるね…」

香月は笑い続ける。口の橋が固定されているように、今度は笑顔のまま動かない。エルは、必死に反応する手を抑えながら、冷静な口調を崩さずに言う。断罪人も罪人も、紙一重なのではないかと、エルは思った。

「そもそも、人は人を裁いていいんだろうか」

香月はポロリとそんな事をこぼす。笑みはそのまま、とても声音は落ち着いていた。エルの手が鎌から遠ざかる。冷や汗がにじむ額をそっと拭うと、エルは香月の顔を不思議そうに見つめた。その瞳は、まるで子猫のようだ。

「それって…」

「すまない。忘れてくれ」

音も立てずに、香月は紅茶をすする。忘れてくれ、と言われても、その言葉がエルの心に引っかかって仕方がなかった。その言葉が軽い意味だとは到底思えないのだ。

「お前は死んだ俺の妹にそっくりだ。無表情なところを抜いてな」

紅茶のカップをエルの方に傾けながら、香月は優しく微笑んだ。先ほどの貼り付けた笑みとは違う、優しい笑み。

「だから、とてもお前を罪人とは思えない。服の趣味も目も髪も瓜二つだ」

哀愁漂うため息の音。エルはゆっくりと首をかしげる。深くは掘り下げないで、聞き流そうとエルは思った。その過去に触れない方がいいと、エルの直感が訴えていた。