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「ん……」
「お、目ぇ覚めた？おはようエルリカちゃん」
眩い光と共に、聞き知った声が耳に入ってくる。
しかし、寝惚けた頭ではちょっとした情報でさえ処理が遅くなるもの。少女は瞬きを数回繰り返した後、たどたどしい口調で「しんぺい神さま……？」と聞き返した。
「うん。しんぺい神だよ〜」
緩い口調で手をヒラヒラと振る。その時には朧気だった輪郭も徐々に形を捉えてきて、もう一度瞬きをすれば、神と書かれた雑面をつけた彼がしっかりと視界に映った。
「ここは……医務室、でしょうか？」
「うん、正解。結構強い睡眠薬を盛られたみたいだからね」
「どこか、不調な所はある？」
何時もより更にゆったりと、まだ頭が完全に覚醒していない少女が理解できるよう話す。少女は自分の体に意識を向けて、少ししてから「いいえ」と答えた。
「そっか、なら良かった」
心底、そう思ってると分かる安堵した声が、少女の耳へと入る。
優しく頭を撫でる手が、伝わる暖かい体温がとても心地よくて、少女の瞼は緩やかに閉じていった。
あのパーティーの時とは明らかに違う、眠る前の心地良さ。いつの間にか、少女の長い睫毛はしっとりと濡れていた。
「…………寝たか？」
「寝てるよ。それはもうぐっすりと」
少女が目を閉じてから数秒後、しんぺい神ではない別の声が、仕切りを立てたベッドから聞こえてきた。
声の主は仕切りからそっと顔を出し、少女の可愛らしい寝顔を見てホッと安堵の息を漏らした。
「罪悪感感じてるんやったら、なんでこんな作戦決行したん？グルッペンＭやないやろ」
「Ｍなわけあるか。それに……俺も出来る事ならしたくなかった」
「誰が、自分の可愛い姪を、敵を誘き出す為の餌に進んで使うんだ」
乱れた髪から覗く赤い双眸は、いつになく澱んでいた。
一国の、しかも大国であり軍事国家であるビア王国の総統である彼は、時として非情な判断を下さなければならない。例えそれが、溺愛する姪相手であっても。
だが、心と頭はそう簡単に切り離せるものでは無い。当たり前だが、彼は総統である前に、一人の人間なのだ。
「……愚問やったな、すまん」
「いや、大丈夫だ」
その後グルッペンは仕事に戻った。医務室にあるデスクチェアに腰掛け、しんぺい神は少女の眠るベッドを眺める。
「まだまだ不甲斐ないなぁ、俺ら」
分厚い雲が、月を飲み込み、光さえも覆い隠す。
ポツリ、ポツリ。
雨が降りはじめた。
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とうふ(プロフ) - 白猫さん» ありがとうございます！ノロマな更新ですが、これからも応援よろしくお願いします (2020年4月17日 19時) (
レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - 面白くて一気に読んでしまいました！笑 とても面白く想像しやすかったので、楽しく読めました！ 更新頑張ってください。応援してます！ (2020年4月17日 7時) (レス) id: 324236a98a (このIDを非表示/違反報告)
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