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 甲高い音を立てて割れるグラス。服が汚れるのも厭わずに、ローベックは倒れる少女の身体を抱きとめた。少女の瞳は固く閉ざされており、彼が揺すっても起きる気配はない。

 突然の彼の大声とグラスの割れる音に、会場内の視線は二人へと注がれた。しかしローベックはそれ所では無いと、駆け寄ってきた使用人の胸ぐらを掴む勢いで「医者を!」と叫んだ。


「何事です……エルリカっ!!」

「何と……っ行動が遅いぞ!早く医者を呼ばぬか!」


 後から来たオスマンとポールは、その光景に目を見開いた。オスマンは青褪めた表情で少女へと駆け寄り、ポールはすぐに使用人へ指示を飛ばした。


「そんな、何故、何故エルリカが……っローベック伯爵!一体何があったのです!?」
「オスマン殿!落ち着いて下さい!」
「オスマン外交官殿、一先ず落ち着いてくだされ」


 二人に諭されたオスマンは、ハッとした表情で「すみません……」と震える声で言った。

 あの後、使用人達によって客室へと運ばれた少女は、この館の専属医が直ぐに診察をした。結果、命に別状は無く、盛られた薬もただの睡眠薬だった。

 パーティーは当然の如くお開きになり、参加していた貴族達は皆不安の色を浮かべながら自分の屋敷へと帰っていった。使用人達も今日の業務はもういいと、執事長とメイド長だけを残して引かせた。

 しかし、貴族全員が帰った訳ではなく、少女の近くにいたローベックは残り、ドリンクを渡した使用人とそれを作った料理人は容疑者の為その場に留まる事となった。
 一同はホールを後にし、食堂へと移動した。


「命に別状は無いが、一体誰がこんな愚行を……」
「恐らく隣国のスパイの仕業でしょう。あそこは最近妙な動きが多い」


 苦々しげにポールは呟く。ローベックはポールの呟きに、隣国の仕業ではと推察した。

 総統閣下の親戚であり、尚且つ王家の血を引く者に薬を盛るなど言語道断。議論の余地なく極刑一択だ。
 それを知っている使用人達は可哀想になるくらい震えていた。


「ですから、彼らの二人、もしくはその両方が隣国の──」
「それはちょっと時期尚早では?」

「オスマン殿……とコネシマ公爵!?」

 席を外していたオスマンの連れてきた人物に、二人は驚愕した。
 一方コネシマは、自分が公爵と呼ばれたことに不快感を表していた。


「いや、それより外交官殿、時期尚早というのは一体?」

「それは貴方が一番良く理解しているでしょう?」


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とうふ(プロフ) - 白猫さん» ありがとうございます!ノロマな更新ですが、これからも応援よろしくお願いします (2020年4月17日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - 面白くて一気に読んでしまいました!笑 とても面白く想像しやすかったので、楽しく読めました! 更新頑張ってください。応援してます! (2020年4月17日 7時) (レス) id: 324236a98a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とうふ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年11月16日 0時

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