元の主、今の主【和泉守兼定】

今の主 ページ21

21.今の主






｢秋かぁ…雅な季節だよね｣

｢そういう君は全く雅でない格好をしているね｣






ホットパンツにTシャツ、風が肌寒かったので小袖を羽織って、縁側に胡座をかいている。僅かに色づいてきた庭き木々を見るためだ。






もちろん煙草セットも忘れていない。






｢全く…ようやく和泉守と分かり合えたんだからこれからはもっと主としての自覚をもってだね…｣

｢あーうるさいうるさい｣






お小言はもうたくさんだ。






｢やっぱり同じ刀派だと性格も似てくるのかねぇ。国広も国広だけど｣

｢？どういうことだい？｣

｢いや、土方組がさ。最近うるさくて｣






また近侍をしてくれるのは良いものの胡座をかくなだの、煙草は1日3本までにしろだの、しっかり休みを取れだの。お母さんか。






｢どこの文系ゴリラだっつの｣

｢あっごりらってあれだろうこの前てれびで見たやつだろう｣

｢喜ぶな｣






私は煙を空に吹く。






｢ま、無関心でいられるよりはいいか｣

｢僕たちはそれぞれ個性があるからね。愛情の伝え方も十人十色だろう｣

｢…ん。そだね｣






その時もう聞きなれた足音がふたつ、こっちに近づいてくるのに気づいた。






｢おや、彼らが来たようだね｣

｢やばいこんな格好してるの見られたら…｣






慌てて隠れようとしたが遅かった。






｢主ぃ！｣

｢げっ｣

｢主さん！｣

｢げげっ｣






あぁ、ご先祖さま。貴方の愛刀は今日も今日とて元気です。私はこの騒がしい本丸で楽しくやっています。煙草はやめられません。






私は貴方の血を受け継ぐ者として、その名に恥じないように、私なりにやっていけそうな気がしています。






だから…






｢たまには気を抜いたっていいだろうが！｣

｢あんたはいつも抜いてんじゃねぇか！｣

｢そうですよ！あと煙草！それ何本目ですか！？｣

｢いちいち数えないからそんなん。誰に何を言われてもね、煙草だけはやめないから｣

｢主ぃぃい｣

｢主さんんん｣









『全く…頑固さは俺譲り、か』

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