君に最後の告白を【Alan.S】 (ページ9)

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「まだ好きなんだよ。Aのことが」

自分の気持ちを裏切ることなどできるはずもなかった。

順調にまっすぐであったはずの俺の恋路はある地点で突然絶たれ、その先は断崖絶壁になっている。そこから先に進むことが出来ない。

しかし今は橋がまだ完成していないだけでその先に道がないわけではないのだ。そう信じているからこそ俺はこの恋を諦められない。

「…そっか」

涼太はこう見えてリアリストだ。時に無茶な行動に出ようとする俺を戦地で何度も諭してくれた。彼は何時だって正しかった。

「でもね亜嵐くん。亜嵐くんは"まだ好き"でも、Aちゃんはそもそも"まだ好きじゃない"んだよ」

ほら。
涼太は正しい。冷酷なまでに。

「もし何もかもが元通りに…3年前に戻ったとしても、その時にAちゃんがまた亜嵐くんのことを好きになってくれる未来は確定ではない。そんな未来信じたくないけれど…でもその可能性を想定しておかなければならないほどの時間が経ってしまった。Aちゃんがリセットされてしまったあの日からもうすぐ1年だ」
「…」
「俺たちは戦場で嫌という程学んできたはずだ、いつでも最悪の可能性は想定しておくべきだって。その最悪の未来が訪れた時、亜嵐くんは全てを受け入れて、諦めて、前に進むことができるの？」

生唾を飲み込む。酔いはどこかへ行ってしまった。

最悪の未来。

2人で過ごしてきた俺とAの2年間が、俺だけの思い出になってしまう可能性。

その時俺は一体どうするのだろう。潔く諦められるのだろうか。

この恋を。

「…俺たちは戦場で嫌という程学んできたはずだ」

机の上で拳をぎゅっと握りしめる。

幾万回もトリガーを引き、幾千人もの人間を殺してきた手。傷とマメだらけの、不格好な手。

Aのあの小さな手を優しく握った手。

「どんなに最悪の状況に立たされても、絶対に諦めるなと」

涼太が笑った。今度はどこか嬉しそうな笑顔だった。

「言うと思った」