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お嬢やん、とこのAREAではあまりいない独特の訛りで呼びかけられ振り返る。ついでに独特のあだ名で呼ばれたことはもう気にしない。いつものことだ。
「数原さん!どうしたんですか、こんなところで」
戦争がなくとも病気や怪我に休みなどない。ずっと出勤していたところにようやく1日オフが舞い降りたので出かけていたのだ。
家にひきこもっていても気が滅入ってしまう。
気分転換がてら適当に入ったお店でコーヒーを飲んでいると、ばったり数原さんと鉢合わせた。このAREAも領土を拡大してきているとはいえ、まだまだ狭い。
出先でばったり偶然なんてことはよくある話だ。
GENERATIONSの一員である数原さんはタトゥーがたくさん入った肌にサングラスと風貌こそ少し怖そうだが、基本的にはとても優しい。そのギャップがこの人の魅力だと思う。
もちろんそこだけではないが。
私のいる4人がけテーブルの空いている席を指さし、ここ座ってええ?と聞かれ頷く。
むしろ誰かとお話できるのならありがたい。どうしても1人だと考え事が増えてしまうから。
「今日オフやし買い物でもと思ってな。戦争がない時の職業傭兵ほどヒマなもんはないなぁ。あ、せや亜嵐くんと一緒やで」
「白濱さんも?」
「そうそう。おーい、亜嵐くん」
店の外に立っていたジャケット姿の後ろ姿がくるりと振り返った。ショーケースのガラス越しに目が合う。ぱっと花が咲くような笑みを浮かべ店に駆け込んでくる様を見ているとこの人はモテるだろうなぁと思う。
その割には今恋人がいるとか聞かないのだが。
「あれ、Aちゃん。こんなとこで会うなんて偶然じゃん。Aちゃんもお出かけ?」
「はい。久々のお休みなので」
「お嬢はいつも忙しそうやもんなぁ」
「そうですかね」
他愛もない話。その合間に、ふと白濱さんの視線が気遣うような柔らかいものになった。
「なんかあった?」
「え?」
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かな - 続き楽しみです! (2020年10月10日 22時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねこた | 作成日時:2020年9月17日 3時