君に最後の告白を【Alan.S】

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:4,247 hit

1 ページ1

□□□□□□□□

近未来。

国家の概念が崩壊し、民主主義も共産主義も資本主義も淘汰された。ついでとばかりに国境も意味をなさなくなった。

母国などない。歴史は忘却の彼方に追いやられ、人種も老若男女もぐちゃぐちゃになった22世紀の地球で、俺はこの狭苦しいAREAとやらを守る誇り高き傭兵として今日も最前線で人を殺している。

「クソッ、キリがねぇ…！」

舌打ちをしながら塹壕から小機関銃と頭を出し、迫ってくる敵を討ち取っていく。

数えきれないほどの人間を殺してきた。葛藤は常に自分の胸の内を渦巻いていた。

俺は家族を守るために、家族を生かすために彼らを殺す。しかし彼らにも家族や愛する人はいて、こんなクソッタレな時代にも未来への希望を持ち戦っていたのだと。

そう考えた時にこれまで放ってきた幾千もの弾丸をたまらなく恐ろしいものだと実感した。己の重ねてきた行為の罪深さに震えが止まらなくなることもあった。

それでも戦わねばならない。

それがこの時代に生まれ落ちた俺たち人類の運命なのだ。いいだろう、運命がどれほど残酷であろうとも死ぬまで付き合ってやる。人を殺して得た金で飯を食らい、ほんの刹那の安寧でとびきりの女を抱いて謳歌してやるのだ。血も涙もない神様とやらに中指を立てながら。

『我々F21は兵士と住民たちの安全のためにX0に投降する。これは勇気ある選択である。我々が未来を生きるための、最良の選択である』

片耳のイヤフォンに繋いだ携帯無線機から司令官の声が流れ込んで来る。銃弾が掠ったせいか、ノイズまじりのその声は酷く不愉快だ。

どくどくと血を流す右の脇腹を力の入らない手でぐっと押さえる。

いやいやいや未来を生きるための最良の選択？こっち今にも死にそうなんですけど。

生まれ育ったAREA F21が大好きだった。年中暑いのが難点だが、みんな陽気で温かかった。だからこそ俺はAREA F21のために命を賭して戦ってきたのだ。

だが今はどうだ。

形勢不利の中敵の銃弾を脇腹に受け、俺は無様に転がっている。周囲の味方に生きている者は誰もいない。

助けは来ない。

遅すぎたのだ。投降の判断が。