B2-9 ページ15
(壊れた……？)
恐る恐る鍵盤を押すが、音はならない。あの耳障りな音が聞こえなくなって、ショッピは少しだけ安心した。が、オルガンはまた独りでに演奏を始めた。鳴り響いたのは、とても壮大な音楽だった。
(……うる、さい)
脅迫するような、責め立てるような、攻撃を仕掛けてくるかのような音に、ショッピは目を瞑る。心が掻き乱されて、ぐちゃぐちゃになった気がした。
耳が、頭が、割れるように痛い。
鼓膜が痛むほどの音で奏でられる攻撃的な音楽と、それに合わせて濃くなっていく甘いにおい。
「あぁ……っ、」
ショッピは耐えきれず、Aを抱えたまま膝をついた。そのまま起き上がれずにいると、ふっと意識が遠のいた。
▼△
ハッとして目を覚ますと、あの甘いにおいも暗い空間も無くなっていた。頭もスッキリとしていて、視界に映るもの全てが明るく見える。
「……ここ、は？」
ゆるゆると顔を上げ、ショッピは息を飲んだ。
目の前に拡がっているのは、美しい教会だった。色とりどりのステンドグラスがフロアの壁一面に張られ、どこからが柔らかく優しい光が降り注いでいる。
ステンドグラスの前には、さっきショッピが羊の血をぶちまけたオルガンが、小さく鎮座している。
そしてその前には、美しい茶髪の女性が立っていた。
白い手袋をはめ、手を胸の前で組み、長いまつ毛を伏せて、まるで祈っているようにそこにいた。
その女性はこのフロアに似つかわしい、シスターのような服装だった。
でも、きっとこの女性が、ここB2のフロア主なんだろう。
「貴方は、誰ですか？」
優しい声で、シスターはそうショッピに語り掛ける。その声は妙に穏やかで、ショッピの肩から力が自然と抜ける。
「貴女こそ、誰ですか？」
「私はレイチェル、この教会のシスターをしています。貴方は誰ですか？」
「……ショッピ・フォスター」
ショッピは少し警戒しながら、自分の名前を名乗る。
レイチェルと名乗った女性がこのフロアの主ならば、いつ危害を加えてきてもおかしくない。一秒だって気が抜けなかった。
「…貴女も、俺とAを殺すんですか？」
「いいえ。だって、Aはともかく、私は貴方のことは知りませんもの。ね、ショッピさん」
優しく微笑みながら、レイチェルは続ける。
「Aの目を覚ましたいですか？」
今まで閉じられていた目が、優しく開く。
穏やかな黄緑の目が、ショッピを真っ直ぐ見つめていた。
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うわばみ��(プロフ) - 咲夜（さくや）さん» コメントありがとうございます！不定期かつ気まぐれ更新ですので気長に待っていて頂けたら嬉しいです。 (9月3日 20時) (
レス) id: ab7bcef119 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜（さくや）(プロフ) - 続き楽しみにしています。更新頑張ってください (8月31日 21時) (レス) id: f2b60f62ba (このIDを非表示/違反報告)
うわばみ��(プロフ) - ルキさん» コメントありがとうございます！いつも更新が遅いですが完結させるつもりですので、気長に待って頂けたら嬉しいです。 (2022年12月7日 10時) (レス) id: 08a0a12774 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - いつも拝見させて頂いております。すごく面白くてお気に入りの小説です。次の更新も楽しみにしています！ (2022年11月29日 18時) (レス) @page23 id: 7b284a32ed (このIDを非表示/違反報告)
うわばみ��(プロフ) - こめつぶさん» コメントありがとうございます！完結できるよう頑張ります！ (2022年2月6日 11時) (レス) id: 2061b1d98e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うわばみ�� | 作成日時：2020年12月19日 16時
