B4-2 ページ11
どこを見ても墓しかないフロアを歩き回りながら、ショッピはさっきAから聞いた話を、脳内で反芻していた。
ここにいるのは、天使と呼ばれるだけのシリアルキラーだということ、なにかを試すための観察、もしくは実験施設のようなものだということ。
Aにはわからないことが多く、ここのことは半分も知らないらしい。
おそらく、Aは例外的に聞かされていないんだろう。まだ子供だからなのか、それとも別の理由があるのか、ショッピにはわからない。
なんて考え事をしながら、廊下の奥にある『第二墓場』へ足を踏み入れると、一際目を引く墓石が目に飛び込んできた。繊細な細工の施されたそれは、薄く水が張っているように、青みがかっている。
墓石の前には、人一人が入れるほどの穴が空いている。が、中にはまだ誰もいない。
明かりに吸い寄せられる蛾のように近寄ってみると、そこに掘られてある名前に、ショッピは小さく息を飲んだ。
「……名前」
「え？」
「俺の、名前が書いてある…」
ショッピの言葉に、Aは自分と同じ高さの真新しい墓石を見上げる。しかし、文字が読めないAはいまひとつピンッとこないらしく、少しだけ首を傾げる。
「気に入られたんじゃない？」
「……マジで？」
「よかったね」
「それ、喜んでええの？」
複雑な心境で、ショッピはもう一度自分の墓を見る。あまり嬉しくはないが、この世に自分の墓が用意されているのは、なぜだか酷く安心する。
「…あ」
「どうしたん？」
「あそこ…開いてる…」
Aが指さした先には、ぽっかりと口を開ける大きな亀裂があった。底からは、まだここよりは温かい風が、微かに漂ってくる。
「……行ってみる？」
「うん」
ショッピとAは一瞬、なにかを確認するかのように目線を合わせ、注意深く暗く寒い亀裂に足を踏み入れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ネロ - らっぴょこさんさん» 同じく (2021年3月26日 21時) (
レス) id: 60a73795c6 (このIDを非表示/違反報告)
うわばみ��(プロフ) - ルキさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2020年10月30日 22時) (レス) id: baf7cd5c38 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ(プロフ) - あぁぁぁっぁ好きっ！(唐突)更新頑張ってください！応援してます！ (2020年10月30日 21時) (レス) id: cf78d11b1b (このIDを非表示/違反報告)
うわばみ��(プロフ) - らっぴょこさんさん» そう言って貰えて嬉しいです。これからものんびりですが、頑張ります。 (2020年9月13日 21時) (レス) id: 5c7d5c749b (このIDを非表示/違反報告)
らっぴょこさん(プロフ) - あ、好きです。殺戮の天使もdも好きなので､､、こういうフリーホラーゲームとコラボ(？)してる作品って少ないですので､めちゃテンション上がりました！応援してます！ (2020年9月12日 23時) (レス) id: c590781f3e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うわばみ�� | 作成日時：2020年8月15日 17時
