いざ、江戸の町へ ページ32
「神楽ちゃんって、かぶき町の女王なの?」
「そうヨ!! 公園のブランコは全部、このかぶき町の女王 神楽様のものアル!!」
「それって、村長みたいな感じ?」
「工場長アル」
「何の工場長?」
手を繋いで歩く神楽と沙苗。歳も一歳違いの彼女たちはすっかり打ち解けたようで、るんるんで江戸の町を散歩している。
少し後ろには、微笑ましく見つめる新八と鼻をほじる銀時。妹たちと手を繋ぐ長女が悠然と歩を進める。どこかそわそわしている妹たちは、手を離したら今にも駆け出しそうだ。
かぶき町は子どもに刺激が強いと、その手前の町に繰り出すことにした。そこならば、子どもたちが好きそうな雑貨店や食事処が並んでいる。銀時が贔屓にしている団子屋も、そこの一角に店を構えていた。
あれはなに、これはなんだと興味津々な様子で神楽に聞く沙苗は、どこからどう見ても年頃の13歳だ。稽古で汗を流す朝の一面とはまた違う。
「あ……」
「どうしたアルか? なんか珍しいもんでも見つけたカ?」
「あれ、」
指した先には、店先に並ぶ金平糖の瓶。つられてそちらを見たAも、ふと笑みを零す。糖分王も同様で、おっと声を漏らした。
一足先に、Aが店先で膝を曲げた。しゃがみこんで、少し大ぶりなそれを手に取る。水色と、白いそれを比べ、くるっと振り返った。
「銀時さん、どっちがいいですか?」
「あぁ? あー……」
そういえば、依頼料がまだだった。現金ではなく金平糖と言ったな、確かに。昨日のことだが、すっかり記憶の彼方に飛んでいた。
銀時も、それに並んでしゃがみこむ。ヤンキー座りというやつだ。
「両方」
「え、両方いきます?」
「おう。悪ぃか?」
「いえ。大事な依頼料ですから」
「ん。あー、あとこいつも」
「わ、可愛い」
「それ3つで手ぇ打つわ」
「はぁい」
追加で薄桃色の金平糖をチョイスすると、意図が分かったのだろうAがくすりと笑う。傍らで色とりどりの金平糖をしげしげと見つめる妹らの頭を撫でて、カゴを取りに立った。
カラフルな飴玉がぎっちりと詰まっているのも銀時は好きだが、糖蜜塗れの金平糖もダイレクトに糖分摂取ができて好きだ。幼い頃は、あまり甘味がなく贅沢品のひとつとして数えられていたが今では文化の発展に伴い手に取りやすい価格まで下がった。閑古鳥が大合唱している万事屋ではなかなか手に入りにくいが。
と、やたら視線を感じた。ついと下を向くと、大前家の末っ子がこちらを見つめている。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時