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お出かけの姉妹、稽古する兄弟 ページ31

昼食を食べ終えた後は江戸の町に出ることになった。とはいえ、急に着の身着のまま駿河から来た彼らの所持金はたかが知れている。長女も仕送りのために貯金し、定期的に送金しているため自由に使える金銭は限度がある。

万事屋の万年金欠は周知の事実であるため、なるべく金を使わないようにと念を入れて遊びに行くことになった。

弟らも行こうと誘ったが、朝稽古の際に隊士たちと手合わせをすることになったと断られた。行くなら姉ちゃんと行きたいと言われ、次女はジト目で長男を見返していた。


「姉ちゃんと稽古、どっちが大事なの」

「姉ちゃんを負かすために稽古してんだよ」

「何言ってんの?」


よそ行き用に髪を整えてもらい、短い髪をくるんとまとめた次女が呆れて手のひらを上に向ける。合気道バカとは話していられない、といった態度だ。

長男はというと、朝とは異なる稽古着に着替えて足首や手首に包帯を巻いていた。テーピング代わりなのだろうそれを慣れた手つきで調整する。

明日なら遊びに行きたい、と言えば分かったと長女が笑う。こっそり次男と手のひらを合わせていた。


「迷惑掛けちゃダメだよ。包帯はちゃんと巻くこと」

「うん、分かってる」

「準備運動もちゃんとしてね。関節痛めたら大変だから」

「大丈夫だって」

「よし、手出して。龍も」

「ん、」


血豆が犇めく掌に、雪の結晶のような粒をふたつ転がす。薬を呷るように頤を天井に向けた。

ごりごりと歯で潰した懐かしい味に、ふっと笑みが零れる。


「ほしのかけらだ」

「久しぶりだね」

「稽古、頑張って」

「うん」

「じゃあ、行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


万事屋に連れられて屯所を出る姉と妹たちを見送り、金平糖を飲み込んで稽古場を目指した。

しっかりとした足取りで向かう道中、童顔の隊士が合流する。朝稽古にはおらず、駿河で自分たちを救出した隊を率いた彼だ。


「よーう、元気かィ」

「あ……えっと、沖田さん」

「覚えてくれたか、光栄だねィ。

どうだい、俺と一発やらねぇか」

「え?」

「剣の扱いにやたら長けたのがいるって聞いてなァ、どんなモンか見てみたかったんでィ」


きょろ、と兄と弟の目がかち合う。声に出さないそれが、何よりの答えだ。


「ぜひ、よろしくお願いします」

「手加減なしで頼まァ。

で、ウチの隊士吹っ飛ばしたのはどっちでぃ」

「おれです」

「ほーう、こんなちっけぇのが。こりゃ真選組もうかうかしてられねぇや」

「へへ」

いざ、江戸の町へ→←知らず知らずに子は育つ



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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:pillow | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年2月23日 17時

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