蓄積した火薬 ページ4
「……よう」
「何がよう、だよ。何してんの、私言ったよね。道場を頼むって、あの子たち頼むって。
雪慈くん、何してんの」
「……この国を、変えるためだよ」
「何を変えるの。まだ小さい子たち脅してまでやることなの?」
「お前に分かるかよ!!!
勘当同然でお前みてぇなガキんとこに置いていかれた俺の気持ちも!! 女のお前に勝てねぇ情けなさも!! 年下のガキ一人に一本も取れねぇ悔しさも!!
廃刀令の時世に道場なんざやりやがって、情けねぇったらありゃしねぇ!!」
「何を……」
「お前一人いなくなったらこの有り様だ。田舎のジジババ共はあっさり俺を信頼したがな、テメェの弟妹は絆されちゃくれなかった」
「つまり、なに? 私に対する嫌がらせでこんなことしたの?」
「それも一つ、あるがな。
俺が勘当されたのは、攘夷志士だった兄貴に憧れたのが原因だったって話したろ」
兄が攘夷志士として戦争に参加したとき、本人はまだ当時9歳だった。
国のために刀を奮わんとした兄に憧れ、攘夷戦争が終結した今でも志士に憧れ刀を手にした。
それに激怒した父に連れられたのが、Aの道場だった。長女を師範代とした道場に鍛えてもらい、心根を叩き直してもらえとの意図があった。
自分より歳下の女に負けるとは思っていなかった雪慈だが、合気道でも剣術でも敵うことはなかった。
それどころか、もっと年下の男児にも負ける始末。兄が攘夷志士というだけで偉くなった気になっていたプライドをへし折られた。
それが毎日続けば攘夷志士への憧れはなくなるかと思ったが、勝手に下だと思っていた歳下の師範代にボコボコにされた怒りが蓄積された。簡単に言えば「むしゃくしゃしていた」という表現が正しいかもしれない。
そこに声をかけたのが、かつて兄と共に刀を手にした攘夷浪士たちだった。刀は使わないが、兄のように国を変えんとする活動に参加しないかと。すぐに話に乗った。
そして、麻薬製造計画が進行し、道場を提供した。後の流れは住職らと同じである。
帯刀した大の大人たちに脅える門下生に、気分が良くなった。長女がいないことだけが癪だが、いずれ屈服させてやると希望を抱いて。
しかし、一つ誤算があった。Aが雇われたのがかぶき町の女帝とも称されるお登勢が営むスナックであったことや、そこに稀代の
かくして、計画は頓挫することとなったのである。
482人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時