真選組VS大前家 ページ22
打ち込みを終えた後は実践稽古に入る。ここでは隊長格と真剣に打ち合いができるため、普段関わることがない隊士らは何やら凶悪な笑みを浮かべている。ああいう大人になっちゃダメだよと元悪人面の山崎が美菜や沙代に教えていた。
「お前らはまずそこで見てろ。見本と言っちゃなんだが、うちのやり方を見せる」
実は十番隊隊長の原田と、最近入ったばかりの隊士が相対して竹刀を構える。
始めの合図もなく、竹刀と身体が激突した。鍔迫り合いどころじゃない、竹刀を介した暴力だ。
見入る龍之介の首根っこを掴み、沙苗が戻れと着座させる。
じぃ、と黙って見ているのは長女と長男だけだ。
技も、呼吸も荒々しい。野蛮と言われればそれまでだが、お綺麗な稽古よりかはよっぽど見応えがある。
ケンカだ。刀があろうとなかろうと、真剣なぶつかり合いなのだ。
そうこうしている間に、隊士が吹き飛ばされた。それが終了の合図なのだろう、原田が戻った。
「これがうちのやり方でな。どうだ、やるか」
「やりたいです」
「だろうな、こんな殴り合いみてぇな稽古やりたがら……
なんて?」
「おれやりたいです。一番手、お願いします!!」
「次は私、お願いします」
さぞ怖がるかと思いきや、きらきらと目を輝かせて挙手する次男と長女。苦笑いを浮かべる次女辺りは、剣狂いの次男や師範代の性質を嫌というほど把握しているのだろう。
じゃあまずは、と次男が指名された。意気揚々と竹刀を携え、乱れ髪を簪で纏め直した。
組側からは、田舎での道場破りが自慢だという隊士が名乗り出た。 それなりに腕の覚えがあり、体格も相まって腕力を活かした剣術を得意とする。
竹刀を構えた瞬間、隊士が一気に踏み込んできたが慣れた様子で攻撃をいなす。
隊士よりも小柄ということもあってかちょろちょろとした動きがあるが、何もそれだけが武器ではない。
打突を流し、力任せに竹刀を奮っていたのを利用して懐に入り込む。
ぁ、と思った途端、勝負は決まった。喉元を突き、打撃で爪先が浮いた。
顎が上を向き、背を床に投げ出した隊士は何が起きたのか分からないようで、混乱した様子で天井のシミを数えていた。
「……一本」
ぼそりと呟いた副長の音は、その場にいた全員の鼓膜を震わせた。
嘘だろ、というざわめきが大きくなる。
一礼して戻った龍之介は、慢心した様子もなく竹刀と腰を下ろした。
「いい突き」
「姉ちゃんの教えだよ」
「姉ちゃんじゃないよ」
「……師範代」
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時