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大前流朝稽古 ページ19

「やーっ!!」

「剣先上がってる。呼吸は鼻で!!」

「えいやーっ!!」

「手首返す、動きが固い!!」


隊士らがのんびりと道場に赴くと、すでに先客がいたようだ。駿河からの来客一行である。

彼らの実家も道場というだけあり、朝稽古は欠かせないのだろう。だとしても、まだ太陽の頭頂が見えたかなくらいの時間から動いているとは何事だ。

Aを中心に置き、他の5人はぐるりと囲むように円をつくっている。竹刀の先は、全員姉に向かっていた。

気合いと共に一歩踏み込み、あっさりといなされる。驚くことに、その中にはまだ6歳の女の子が防具を付けて竹刀を持っていた。容赦なくかわされるが、どれだけ転んでも泣かずに立ち上がる姿は健気そのもの。思わず、覗き見る隊士たちの目頭が熱くなった。

つうか、姉ちゃんよ。あんた手加減ナシかよ。


「はぁ、はァっ……ぅ、ぉえ……」

「終わる?」

「もう一本!!」

「よしおいで」

「ヤーーッ!!」

「振りかぶり大きい!!」


アッ、と思わず溢れ出た声が飲み込まれる。次男が繰り出した一撃をかわし、膝を曲げて重心を落とした。左手に構えた竹刀が胴を打ち込み、男は顔面から突っ伏した。

すっくと立ち上がる、あれは誰だ。隊士たちが騒いでいた、湯上り美人ではないのか。朗らかに、弟や妹に笑みを向けていた彼女ではないのか。

凛とした眼の先に見据えるは何か。背後で倒れる門下生を省みることなく、竹刀を構える。


「次」


今度は、姉が打ち込むようだった。門下生が一列に並び、先頭に立つ長男が竹刀を構える。

はじめ、の号令と共に床を蹴った。胸元への打突音が振動となり、 がんがんと唸る。すんでのところで背後に並ぶ門下生たちは避けたが、したたかに背中を打ち付けた長男のダメージは大きいようだ。

次いで、次女が構える。師範代が面を打とうとしたのを察知し、つられて手元を頭上に振りかぶった。だが、剣閃は左脇腹から右腰に流れるように打ち込まれ、激しい痛みに膝をつく。

先ほど顔面から倒れた次男は手首を打たれ、兄同様に胸元を突く竹刀により吹っ飛ばされた。

次、次と単調な声音だが打ち込まれる一つ一つの剣が重い。

最後に相対したのは次女で、まっすぐに面を打たれた。防御のしようがなかった。


「はい、終わり」

「………いでぇ」

「意外と身体動くね。もう一本やる?」

「休憩って言葉知らないの姉ちゃん!!」

「背中痛ぇんだけど、これ大丈夫? 割れてない?」

「なに、なんか生えるの?」

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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:pillow | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年2月23日 17時

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