駿河へ出張 ページ1
松平公が完全な私情で取り付けたジェットエンジンにより、予定通り10分での到着が叶った。
上空からの様子はと聞けば、攘夷浪士数名が監視役として張り込んでいるらしい。
「人質は!!」
『見当たりません!! どうします、踏み込みますか!!』
「周囲に停留所は!!」
『奉行所に要請しています!!』
「潜伏先までの距離は!!」
『およそ3キロ程です』
「車は出せんのか!!」
『トラックがあります』
「なんでトラックだァ!! 公務員が農家兼業でもしてんのか!!」
怒鳴る土方と冷静に返答する隊士のやり取りで、ようやく駿河に入れたのだと指先に力が入る。
絡んでいた銀時も巻き込み、はっとして力を緩めると握り返してくれた。肩に体重をかける神楽は、腕をぎゅっと抱き締めて体温を移す。
奉行所の空いた場所にヘリを停め、隊士たちは唯一の移動手段であるトラックに乗り込んだ。沖田は躊躇なく助手席だが、平隊士は荷台にぎゅうぎゅう詰めになって乗り込む。
トラックと侮るなかれ。田舎のトラックは都会のベンツに等しい。
ガタンだのゴカッだのとノイズが遮るが、隊士の怒鳴り声がよく響く。
『目標が見えてます!!』
「よし、突っ込め!! 間違っても道場に穴開けんなよ!!」
『分かってまさァ。道場ぶっ壊しゃあ一網打尽、浪士共は全員とっ捕まえられやす』
「何を聞いてたんだテメー!! ガキ数人人質だっつったろうが!!」
『へぇ? ガキっつっても大した人数じゃありやせんでしょう。逃げ回ってりゃ見つかりまさァ』
「オイ、何人つった?」
「ろ、6人です!!」
「聞こえただろ、6人だ!! そいつらの安全が確保出来るまで迂闊な真似はするなよ!!」
『へぇい』
緊張感のない返事にハラハラするが、神楽の「信用ないけど、やる時はやる男アル。ケガさせたらイシャリョーブン取ったらいいネ」という言葉にほっとする。兄弟は皆多感な時期なのだ。
従兄弟は自分より年上だが、帯刀する男たちに対抗できるかどうか。
「にしても、妙だな」
「妙って、どういう事ですか?」
「確かに道場つったら、多くの人数がいてもおかしかねぇ。だが、それは廃刀令が発布されるより以前だったらの話。帯刀した大の男がぞろぞろといたらおかしいと思う奴らはいるんじゃねぇのか」
「確かに……門下生はご家族の方と親類って言ってしましたもんね」
「はい。親戚はそう多くはいないんですけど……」
「にも関わらず、これまでなんの通報もなく潜伏できたのはおかしいだろう」
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時