僧侶と蕎麦 ページ48
「時に清水」
ずず、と蕎麦を啜る桂にん、と目線だけ向ける。
なんだかよく分からない白いペンギンも器用に箸を使い、蕎麦を啜る。つゆ飛んでますけど。
「首はどうした。痛めたのか」
「ああ……寝違えて」
「寝相の悪さは相変わらずか。あの頃、銀時とお前がよく俺や高杉を蹴飛ばしていたな」
「そうだっけか……」
「ああ。よく毛布を掛けてやったものだ、高杉もな」
「え、高杉くんって人に毛布掛けるの?」
「お前あいつをなんだと思っているんだ」
意外そうに見つめる清水に対し、小さくため息を吐く桂。
ヨダレ垂らして寝ているときに蹴り起こすのは大体が銀時だったが、それに倣うように清水もよく毛布を蹴飛ばしていた。
桂は銀時に、高杉は清水に毛布を掛けてやり、寒くなると潜り込む。人肌恋しいのは誰しも同じだ。
そして、時折松陽も参加して毛布の取り合いになったのを覚えている。
「昼寝の時、一時でも眠るとタダでは起きんだろう。気づかんのも無理はない」
「そうかな……」
ぼりぼりと首を掻く清水に嘆息する桂は、彼が眠っている合間に起きたことを話すつもりはなかった。
確かに、一時でも寝落ちると一刻ほど寝る。その間に毛布を掛けたり枕の位置を動かしたりと、まるでお母さんのように甲斐甲斐しく世話を焼いていたのは紛れもない高杉だった。
それは攘夷戦争でも同様で、弓矢の後方支援のほか救護班の手伝いや給仕の真似事もしていた彼は戦場に赴く侍と並んで日々困憊しながら眠っていた。雑魚寝があれば、一人でひっそり眠れる場所を見つけて身を隠す時もある。猫のように丸まり、冷える夜に身を寄せたのは鬼兵隊総督だった。
このニブチンめ、と古い罵りで睨めつけるのに気づかず蕎麦湯を注ぐ清水に、桂は頭が痛くなった。
「そういえば、昨日坂本に会ったぞ」
「坂本さん元気してた?」
「相も変わらずといったところだ。また訳の分からん商いをしているらしい」
「はは、そっか……うわぁ、会いたい」
「お前のことについても聞いていたな。『シミーズくんは元気か』と」
「清水だけど。それだと違う意味になっちゃうから。軽くセクハラになっちゃうから」
つゆを啜る清水は冷静にツッコミを入れる。
そういえばシミーズってどんな意味だったっけ、と思い返しながら桂は蕎麦を飲み込んだ。
「みんな色々頑張ってんだなぁ……」
「何を言う。お前こそ頑張っているではないか、岡殿」
「うわっ、その名前はやめて。恥ずかしいから」
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たまごどーふ(プロフ) - 銀魂の男主小説、最近数少なくなってるので読めるのがとても嬉しいです…更新頑張ってください! (2021年2月19日 23時) (レス) id: 45f2a26062 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月28日 21時