アタシが苦手な野郎共【∞】祭 (ページ35)

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【バレンタインデー】伍ページ35

結依が指定した店にはなんと大倉が。

レジで満面の笑み浮かべやがって、能天気野郎が。

カウンターでホットコーヒーとチョコが入った紙袋受け取って、一人席のソファに腰掛けた。

一口コーヒーを飲むと、僅かな酸味と苦味が熱を帯びて喉を潤す。

さすがはコーヒー専門店。美味い。

両手でカップを持つと、じんわり手のひらがあったかくなる。

あぁ、この暖かさがありがたい……

外のシャリシャリとした音が店の前を通り過ぎる。

ガラス越しの雪はしんしんと降っていて、今夜あたり積もりそうだなと予感した。

舞ってくる雪を観察しながらコーヒーをすすると、誰かが向かい席のソファに座った。

いやいや待てよ。他に席あんだろが。

なんでわざわざここに座る。よそ行けよそ。

一言言ってやろうと向き直ると、しれっとコーヒー飲んでる能天気野郎パート2がそこにいた。

こんのシャクレ野郎。足組んで貴族ぶってんのか。

丸山「お姉さん、ここよろしいですか?」

「聞く前にもう座ってんじゃねーか。他空いてんだろ、向こうとか行けよ」

丸山「何かしら言うてますのん。A先輩をじっくり見ながら飲むコーヒーは格別ですねん♪」

「知るか」

むふふとか笑ってコーヒー飲んでんじゃねぇよ。

顔見られてコーヒー飲まれるこっちの身にもなってみやがれ。

「つか、なんでここにいんだよ。学校から遠いだろ」

丸山「大倉がここでバイトしてるって聞いたんで、偵察がてら来たんですよ。

そしたらびっくり!! ソファでコーヒー飲んでらっしゃるお姉様が♡」

「歳そんな変わんねーだろ」

丸山「もう運命やと思って♪ バレンタインデーにまさか会えるとは思わんかったんですよ。

今日、僕バイトお休みやし」

「あ? 休むの?」

丸山「はい。あ、でもお顔は出すつもりやったんですよ。チョコ渡したかったので」

「お前もかよ……」

ハイッと手渡されたのは、最近百均の店頭でよく見かけたリボン付きの箱。

ちょっと待て。まさかと思うが……

丸山「甘すぎず、苦すぎずなトリュフにしてみました♪」

「えっ、マジ? ガチの手作り?」

丸山「あっ、重たかったですか? 買うのよりこっちの方が気持ち伝わるかなぁと……」

「重い軽いの問題じゃなくて。

いやあの……ありがたく、受け取っておきます…」

率直に言って、びっくりした。

何気にスイーツとかそういう系の店も熟知してる丸山だから、チョコ専門店とかのかなーと予想してたんだが…

いやこれは、予想外だわ。