初対面の一歩先 ページ6
「ま、なんか困ったことがあったら来いよ。依頼は受けてやるから」
「あ、ありがとうございます……坂田、さん」
「……ん、頑張れよ」
へらりと純朴で飾り気のない笑顔を見せられ、やや反応が遅れた。
相手は子ども、田舎のガキだと念じてじゃあなとスナックを後にした。
「綺麗な方でしたね、大前さん」
「このかぶき町の女王、神楽様がみっちりイチからジュウまで町のルールを叩き込んでやるアル!!」
「あんま虐めんなよー」
にししと笑う神楽のお団子頭をひっぱたき、万事屋の玄関で靴を脱ぎ社長椅子へと腰掛ける。
最新号のジャンプを開いても、脳裏に思い浮かぶのは純粋な田舎娘の笑顔。
店内の蛍光灯はオレンジがかっていてややベージュっぽく見えたが、おそらくお天道様の下に出れば白い肌なのだろう。
まるで稽古着のような袴だったが、あれもあれで悪くないなと思うあたり、ああいう年下の可愛らしい女の子に飢えているのかもしれない。
違う違う、銀さんはもっとこうセクスィーなボンキュッボンの女がいいの。ガキはタイプじゃないの。
誰にも向けられていない言い訳を胸中で呟き、意識をジャンプに集中させた。
「不思議な方ですね、坂田さん」
「不思議なのはあいつの頭の方さ。いつだって家賃のことは忘れるわ、パチンコだのパフェだのと余計なもんに金回して給料払わねぇわ、あんなのが雇用主だなんて新八と神楽も大変なもんだよ」
ふう、と吐いた紫煙を追いかける目は温かく、慈愛を見せる母親のようで。
かつて、幼い頃に自分を抱きしめてくれた女性と重なった。
「お登勢さんの息子さん、ではないんですよね?」
「拾ったんだよ。旦那の墓参りに行った時に」
「へぇ……」
行き倒れかと思ったが、供え物の饅頭を全て喰らい尽くし腹を満たしたかと思えば「アンタを守ってやる」とのたまったと。
最初は何を言うんだと思ったが、その眼は真剣そのもので二階を貸したんだと女帝は笑う。
「ま、あんな奴だけどさ。万事屋なんて妙な商売やって生きていけんだ、あいつから学ぶことは少なくない」
「家賃ノ督促カラノ逃ゲ方ダトカ、ツケノ仕方トカ、ロクデモネーケドナ」
「元泥棒のアンタが言うんじゃないよキャサリン」
「じゃあ、私が家賃の回収行ったら……」
「確実に逃げられるだろうね」
「今度鍵ノ開ケ方教エテヤルヨ」
「それピッキングじゃねーだろうな!!」
「もしもの時は門扉を爆破させればいいのです」
「えっ?」
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時