駿河の大前さん事情 ページ44
今は従兄弟が面倒見てくれてます、と朗らかに笑う。
あ、そーなの。よその家にあまり深入りはしない方がいいと、またちびちび酒を飲む銀時とは裏腹に、同じ剣術道場が実家である新八が食いついた。
「今は、その従兄弟さんが道場主なんですか?」
「ええ、まぁ。師範代代理、というような形ですね」
「へぇ!! その方も剣術と武道を極めてらっしゃるんですか?」
「うーん、どっちかって言うと剣術の方が強いです。合気道はどうだったかな……」
「新八ィ、あんまり深く聞いてやんなよ。近所のオバサンに噂流すお母さんみたくなってんぞ」
「えっ!! や、そんなつもりないですからね? 違いますからね!?」
「大丈夫です。分かってますから」
眦を細めて笑う少女は年相応で、とても道場の師範代という豪傑さとは結びつかない。
だが、九兵衛のように低い背丈ながらも神速を謳われる程の腕前を持つ剣士もいる。侮ってはいけないよな、と偏見を取っ払う。
「心配、じゃないですか?」
「毎日心配してます。末っ子は6歳でろくに構ってあげられなかったし、弟は剣ばっかり磨いてご飯のことすぐ忘れちゃうし……って、色々と」
「そうなんですね……」
「手紙書いても、いっぺんに書ききれなくて封筒がぱんぱんになっちゃうところとか、一生懸命字を練習したんだなとか、そういうところが可愛くて」
んふ、と鼻から抜ける笑い方に釣られて新八も目元が緩む。
ちらりと見えた、右上がりの崩れたひらがなは頑張って筆を持ったのだろう。掠れたあとがある。
カウンターに広がる便箋は3枚程だが、まだ封筒から出されていないものもある。一体何枚書いたのだろう。
「アンタ、来週の休みに一旦帰ったらどうだい。駿河行きのチケットはまだ売ってるだろう?」
「あぁ、それなんですけど……さっき駅に行ったら、もう売り切れてたんです。おかしいなと思って聞いてみたんですけど、しばらく無いって」
「チケットが売り切れ? そんなことあるんですか?」
「いやぁ、田舎ですし……本数もないので、売り切れることもあるのかなとは思うんですけど」
「おい。向こう行きって、一日に何本だ」
「朝の10時発と、夕方の6時発の2本です」
「少ねぇな。前からか?」
「はい。観光地から程遠いのと、何本も駅を乗り継がなきゃいけないっていうのもあって利用者数が少ないんじゃないかって」
「江戸に出稼ぎに来てる人は? 帰るときどうするんですか」
「殆どがこっちに住民票移してますね」
薄れゆく駿河への道→←ボジョレーヌーヴォーって解禁されても騒ぐのは一瞬だけ
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時