ご依頼です ページ39
さて、翌日。
江戸から程外れた寺院にて、依頼主は待っていた。
頭を丸めた坊主が、袈裟姿で丁寧に二人を迎えた。
「どーもぉ、ご依頼受けました。万事屋銀ちゃんでぇーす」
「遠路はるばる、ありがとうございます。おふたりに運んで欲しいのは、こちらでして……」
どどん、と効果音がつきそうなほど威圧感があるダンボールだった。
一つ二つではなく、ざっと数えて50ほど。しかも、ダンボールのLサイズなため、一気に運ぶのは無理そうだ。トラックに載せられているのが幸いである。
神楽ちゃん連れてこなくてよかったかもしれない、と内心ほっとする新八をよそに、依頼主の和尚は概要を話す。
「これを、こちらの一覧に運んで欲しいんです」
「これは……」
届け先のリストを見ると、どこも江戸に近い寺院や神社がほとんどだ。それぞれに、ダンボールを5つ運んで欲しいという。
なんでも、仏閣や燈籠などを磨くための清め水なるものを分配することが通例らしいのだが、この大量のダンボールを運ぶとなると郵便局で回せる人数が限られてくるらしく、送料もかなりかかる。なるべく安く、そして今日中にできるのではということでダイヤルを回したという。
「じゃあ、これ全部その清め水とかいうやつなんですか?」
「ええ、分配する寺院は毎年持ち回りでして。今年はうちがやることになりましたが、なんせ僧侶が少ないもので……」
「ああ、そういうことならいいぜ。中身、改めさせてもらってもいいか?」
「ええ。どうぞ」
手近な箱を引き寄せ、ガムテープを引き剥がすと水が詰められた大きい瓶が2つ入っていた。
うん、と頷きガムテープで封をする。
「トラックは好きにお使いいただいて構いませんので」
「うぁーい。行くぞ新八ィ」
「あ、はい!!」
トラックに乗り込み、キーを回して寺院を出発する。舗装された道を進み、寺院が見えなくなったところで銀時はトラックを止めた。
「銀さん? まだ着いてませんよ?」
「新八、さっき開けたダンボール持ってこい」
「え、はい……」
一旦降りて、荷台に載せられたダンボールを引き出しもう一度開けてみる。
特に何も変わらない水入りの瓶を取り出し、透かしてみても何も変わった様子はない。
「ちょっとそれ貸してみろ」
「何するんですか?」
「こう、すんだよ!!」
バリィン、と床に叩きつけ、脆いガラスは呆気なく粉々に割れた。
ええええ、と驚く新八は、辺りに漂う嗅ぎなれた匂いに噎せて袖で口を覆う。
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時