7.5 ページ15
すっかり暗くなってしまった夜。
もう不良でも外にはいないであろう時間帯に、魅録のバイクはとある場所へ向かっていた。
放課後、男山の散歩途中で暴漢に襲われている少女を助けた際に男達が乗った車に発信機を取り付けた。
その少女は神奈祭の出場者で、彼女を襲った男達も神奈祭に何か関わりがあるのだと推測。
発信機が居場所を知らせたのは、『高清水建設』なるビルだった。
魅録「高清水建設……」
『遠慮はいらんっ!! ワシは現場主義の男だッ!!』
静かな夜に響く、年配の男性の声。
それは、魅録にとっては聞き慣れたものであった。
『いやあの、ですから。ここは我々が見張りますので…』
『ワシはね? 部下達に過酷な任務を押し付けて、自分はハンコだけ押してるような男じゃないっちゅうのに』
『あのそれは、よーーく分かっているんでございますが…』
『警視総監 松竹梅 時宗は!! 苦労も部下と分かち合いたいのよ〜』
苗字から察せられる通り、魅録の父親である。
この男、総監という肩書きの割には色んな現場に向かい部下を振り回し犯人を確保するという、少々型破りな男であった。
ガラスを叩く音に気づいた彼がスモークガラスを下げると、そこには息子である魅録が覗き込んでいた。
覆面パトカーとはいえ、息子の魅録が親の職業や所業を知らないわけではあるまい。
魅録「親父」
時宗「魅録……お前高校生がこんな時間に、何してんの?」
魅録「あー……高清水建設調べてんの?」
時宗「部外者が、事件に首突っ込むんじゃないよ」
魅録「事件なんだ?」
しまった、というのは時宗の顔が物語っていた。
この男、顔に非常に出やすく捜査に支障をきたすところがごく普通にあるのだ。
そうして、息子に弱みを握られ情報をリークすることがよくある。
魅録「情報流してよ」
時宗「いやそれはー…」
魅録「ねぇ情報流してよ」
時宗「それはいかん!!」
『やっぱりありがたくなかった……』
シートに滑り、そう呟くのは時宗の部下。
元気いっぱいに部下を翻弄する時宗をできるだけ捜査から引き離したかったが、頑固な上に無理やりにでも捜査方針を決めたがるゆえに、この事件には携わって欲しくなかった。
しかし、こうなっては仕方ない。
部下2人は顔を見合わせ、ため息をついて魅録にできる限りの情報をもたらすのだった。
『なんでこう、揃いも揃って』
『厄介な親子なんだろうなぁ……』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朱雀(プロフ) - ゆかこさん» コメントありがとうございます！主人公は特待生ですが、ずば抜けた天才ではないんです。なさそうでありそう、をイメージしてますので2級ほどが妥当かと思ったのでこのように設定しました。ご指摘、ありがとうございます。 (2017年7月27日 13時) (
レス) id: e3658a4b6e (このIDを非表示/違反報告)
ゆかこ - コメント失礼します。とても面白く、楽しんで読ませていただいています。主人公の設定なのですが2級ですとあまり天才感がないのではないかと思います。 (2017年7月27日 13時) (レス) id: 6ec6dfda31 (このIDを非表示/違反報告)
歌広場公認の嫁だけど文句ある？(プロフ) - 朱雀さん» ありがとうございます。よろしくお願いします。 (2017年7月25日 9時) (レス) id: 2200419093 (このIDを非表示/違反報告)
朱雀(プロフ) - 歌広場公認の嫁だけど文句ある？さん» お望みでしたら、書き加えますよ！ (2017年7月25日 9時) (レス) id: e3658a4b6e (このIDを非表示/違反報告)
歌広場公認の嫁だけど文句ある？(プロフ) - 高清水建設に魅録がバイクで行って父親の警視総監がいるシーンは無いんですね。あのシーン好きで楽しみにしていたのですが…… (2017年7月25日 7時) (レス) id: 2200419093 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朱雀 | 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月8日 16時
