昼のカオと夜のカオ 【江口拓也】

昼のカオ ページ30

「さむっ………。」

成瀬「ちょっと冷えるね……。」









*









同窓会ということで、ワンピースをきてきたが少し薄手なため夜風に当たると、さすがに冷たい。



突然、成瀬は自分の上着を脱ぐ。

そして、私の肩にかける。









*









「え、いや………！大丈夫だって、」

成瀬「俺はいーの。肩に羽織るだけでいいから。」









*









ばさりと、かけられて遠慮しながらもありがたく受けとる。

ありがと、と呟くとはにかむように笑みを浮かべる彼。

その笑顔が高校生の時と少し重なって見える。









*









成瀬「懐かしいな………。
高校生のときからちょっとずつ出るようになって………、なかなか会えなかったもんな。」

「………まぁね、」

成瀬「自然消滅って感じだったもんな………。」









*









_______そうなのだ。

私と成瀬はお互い嫌い同士で別れた訳じゃない。

………ある意味、そこが問題なのだが。


ありがたいことに高校生のときから、ちょこちょこ名前がある役につかせていただいて………。

勉強との両立で忙しかったし、何より立場的にまずかった………。
だから、話さなくなるうちに自然消滅してしまったのだ。

今でこそ、未練などないが当時は結構気にしていたりした。

すると、














*









成瀬「俺さ、今でもAのこと好き。」

「え、」









*















振り返ると思ったより近くに成瀬がいて、びっくりする。

そして、真剣な眼差しに射止められて体が動かない。









*









成瀬「俺の気持ちは今も昔も変わらない。」

「………っ、ごめん。私、今好きな人いる。」









*









すると、急にいつものような笑顔に戻る。

何で笑っているのか、全然わからずきょとんとしてしまう。









*









成瀬「だよな！！変なこといって悪い！」

「いや、大丈夫………。」









*









吹っ切れた、と笑顔な成瀬に少しだけ罪悪感。

これが高校生のとき言われていたら、未来は違ったのだろうか………なんて考えたり。

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