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side.sgi
先程までの騒ぎが嘘のように電池の切れたA。
服も脱がせて下着だけにしてしまったが、脱がせろと本人が騒いだんだ。俺は被害者だ。そう。被害者。
…しかし、このままでは風邪を引きかねない。
仕方無いので下敷きになっている布団をAの下から抜き取った。ごろりとAが身動ぐと白く長い綺麗な脚が艶かしく誘うように俺の視界に入ってくる。
「ホントにコイツは…。」
人の気も知らずにスヤスヤと寝息を立てるAに俺の邪念を隠すように布団をかけた。
するとAは俺の腕掴み、顔を俺の手に擦り付けてきた。
「んふふ…、駿貴ぃ…。」
…タチが悪い。本当に。一体なんの拷問だ。
下着一枚で寝ている好きな女を目の前にして手を出さないほど俺は人間ができていない。
前にも一度こんなことがあったがその時はまだAは服を着ていた。
今日ほど酔ってもなかった…はずだ。
さぁ、この状況。少し悪戯心と下心が出てしまうのも男なら当然だろう。
「A、俺も寝るから少し詰めるぞ。」
一人暮らしなのにダブルサイズのベットを使っているので大きな俺でも余裕で寝れる。
Aを少し横に押しやって俺もベットに上がりそのままAの上に跨った。
「…お前が可愛いことするのが悪いんだからな。ここまで運んでやった報酬くらいもらってもいいだろ?」
聞こえるはずの無い言い訳を呟いて、Aの形のいい唇にキスをした。
「ぅん…。」
いつだか酔ってふざけてした戯れるようなキスでなく、俺の抱えた身を焦がすような恋慕が1ミリでも伝わればいい。そう願いながら。
「…っ、好きだ…A…っ。」
思わず漏れ出た本音に我に返った。…危ない。これ以上はまだだ。結局、長い時間を掛けて手に入れたこの関係を簡単に手放す気にはなれなかった。
そんな意気地なしの自分に情けなくなりながら、Aの上から離れた。
「はぁ…。情けないなぁ…俺。」
項辺を思わず垂らすが、しかしこのままではAの掌の上で踊っているようで癪だ。
そしてここで一つ悪戯を思いついた。
…このくらいの仕返しは許されるだろう。
翌朝起きたAの顔を楽しみしながら、甘いAの香りが溢れている布団の中に潜り込んだ。
「おやすみ、A…。」
今はまだ、このままで。
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作者名:未果子 | 作成日時:2020年12月25日 1時