【QK】女王はバーで溺れる (ページ5)

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マスターが対応をし始めたので気にせず３人で盛り上がる。
たまに…いや、かなりの割合で英語を話せる駿貴か私が相手することが多いので言われるまでそっとしておくのが、いつものお決まりだ。

「駿貴さんなんでそんな拒否するんですか～！」

「Aならまだしもトシに言われて喜ぶのもおかしいでしょ！」

「まぁ、まぁ、そんな可哀想なトシくんには私から一杯ご馳走してあげるから。」

「え！Aさん！いいんですか！？女神様～」

「ふふ、ホント調子いいんだから。」

「えー！トシばっかずるい！」

「ずるくはないでしょ！元はと言えば駿貴が虐めるからでしょ！…テキーラなら奢るわよ？」

「わっるい顔してるよ？A！」

久しぶりに駿貴に会ったからそれなりに私もやはり酔い始めて来たみたいで心地よく身体が少し暑くなって来た。
スーツのジャケットを脱ごうとボタンを外していると先程のテキーラの名前を聞きつけたのか外国人客が声をかけて来た。

「tequila？drinking？」
(テキーラって聞こえたけど、飲むの？)

「え？あぁ…No！drink！I don't like it！」
(飲まない！私あれ好きじゃないの！)

テキーラなんてホント飲むものか。あれは嫌な記憶を呼び覚ましすぎる。８年通ったこのバーで幾度かやらかしているのだから。
私の住んでいたところでは罰ゲームでテキーラなんて酷いルールが、あったから学生の時は週末に使い物にならなくなるなんてよくあった。ホントテキーラは終わる。美味しいお酒ではあるんだけどね。

「駿貴！ほら！テキーラ！飲むか？ってさ！飲みなよ！」

「おまっ…っ！向こう帰った時に２人して痛い目に遭ったの覚えてるでしょ！？ダメだって！ホント！」

「大丈夫だって！私送ってあげるやん！」

「てか、あなたちょっと酔ってるやん！」

２人とも関西弁出まくりである。
それくらい避けたいこの状況。翌日の辛さを知っているからこその騒ぎよう。ホントにやなんだもん。
明日は土曜日だから休みだけど、家のことをしたい。洗濯や掃除。買い物もしたい。こんなところで潰れてなるか。

「まぁ、じゃあ、俺からご馳走するから一杯だけ飲もうぜ。」

「「マスター！！」」

そしてマスターからの死亡宣告。

駿貴は明日大丈夫なのだろうか？そんなことを一瞬頭を掠めたが、無事にテキーラをイッキに飲み干して今日の記憶は遥か彼方へと旅行に出かけたのであった。
え？一杯でそんなことないだろ？一杯で済むわけがないのだ。