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scene.5 ページ23

「心配だから送ってく。」

「え?いいわよ?駿貴こっちから帰ると遠回りになっちゃうじゃない。」

「いいよ。終電近くまで引っ張っちゃったの俺らだし。」


別にタクシーでいつもは帰ってるし遅くなったことなんて全然気にしていない。なんなら電車に乗れたのが奇跡と思える。
それに、駿貴はもう一つ先の駅だから遠回りになってしまうのでわざわざ送ってもらうなんて悪い。(先週潰れて送らせといてどの口が言ってるんだという感じだが、今日はしっかりしているのでそう思うわけだ。)


「いいわよ。先週も送らせちゃったし。」

「はいはーい。いいのー。A見た目はいいから。」

「どういうことよ。見た目はって…」

「はいはーい。降りるぞー。」


そうこうしているうちに私の最寄り駅についてしまい、強引に駿貴は私の最寄りの駅で降りてしまった。…変なとこホント頑固よね。

まぁ、もう降りてしまったものは仕方ない。
そのまま改札を抜け家へ向かって駿貴と並んで歩く。背の高い駿貴が私の歩幅に合わせて歩いてくれているあたり本当にナイスガイ。


「あ、今日ご馳走になっちゃったから駿貴に奢れてない。」

「ん?あぁ。別にいいよ。今更。」

「そういうわけにはいかないわよ。…迷惑かけたんだから。」

「自覚あんならいいよ。」


そういうと頭を撫でられる。何度も送ってもらっているがこのナイスガイに、恋人ができない原因に私は大いに加担している自覚もある。
この男は本当に優しい。私が言うのもなんだが顔はイケメンだと思うし、東大の院に通ってる研究者で、人気YouTuberだし、文武両道。

…そして、そんな男が私に気があるのはわかっている。
わかっていながらはっきりとした関係にしないのはこの男とはそういった感情抜きで付き合っていたいという完全な私の我儘とファーストコンタクトの印象のせいでどうしてもそういう…恋人になって欲しいという目で見れないし、そういう相手としての欲もない。

これに関しては私から思う話であって。だから、駿貴の気持ちはわかってはいるが、告白を躱しているというのもあるかもしれない。
…大人になるということなのか。狡いのだ。
わかっていながら見ないふりが上手くなる自分にも反吐が出る。

ただ一つ確信を持てるのは一線を超えて仕舞えば、この関係は崩れるということだった。

そして何故だか、今日伊沢さんに会ってからその確信が現実になろうとしている。…そんな胸騒ぎがずっとしていた。

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作者名:未果子 | 作成日時:2020年12月25日 1時

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