【QK】女王はバーで溺れる (ページ21)

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「わ、もうこんな時間！」

時計を見るとてっぺんを迎えようとしていた。楽しい時間は本当にあっという間にすぎてしまう。
話している時間が多かったのであまり飲まず(マスターには申し訳ないが。)、いい感じでみんなほろ酔いと言った感じだった。

「ホントだ。すっごい楽しかったんで全然気づかなかった。」

「山本、終電大丈夫？」

「もうそろそろ出ないとまずいですね。」

「そしたら今日はこれでお開きにするか。」

山本さんの終電が近いということでお開きの流れになった。私も今日は深酒をするわけにもいかないので帰ることにする。…先週の二の舞になってはいけない。というかあんな飲み方もうしない。本当に。

「マスター、チェックお願いします。」

「あ、私もー！」

伊沢さんがチェックを申し出たタイミングで、ついでに私もマスターにチェックを入れた。
仕事用の大きなトートバックに手を入れ財布を出そうとすると、隣に座っている伊沢さんがにこりと笑って私の手に手を重ねて財布を出そうとする手を制する。え、何？

「Aさん、今日のここは…」

「え、いやいや、私先に来て飲んじゃってますしいいですよ。」

「いえ、女性に出させれませんよ。」

「じょ…っ、…歳上なので自分で出来ますよ。」

「んー…、というか、

何か考えたそぶりをしてからチラリとこちらを見てグッと顔を耳に寄せてくると

「僕がそうしたいんです。今夜の出会いに。ということで」

そういうとスッと体を離し、悪戯っぽく笑ったかと思うとマスターに私の分も一緒にするように指で合図をする様が、年下の男の子と思えない程あまりにもスマートで動揺してしまった。

…顔に熱が集まるのがわかる。今絶対顔赤い…。

いや、年下といえど３つしか変わら無いので微々たる差かも知れないが、３つも変われば結構感覚も変わるし、経験も違うだろうから女性慣れはそんなにしていないだろうと勝手に思い込んでいたのが悪かった。完全に油断していた。

「A？大丈夫か？顔赤いぞ？」

「へ…！あ、あぁ！大丈夫！大丈夫…！」

「ふ～ん…？なら、いいけど…。酔ったならまた送ってやるからな？」

「あ、ありがとう！なんか暑くなってきただけやし大丈夫！」

福良さん達と話していた駿貴に顔を覗き込まれてさらに動揺する。…なんか変だ。今までこんなことたくさん経験してきたのに。
今日に限ってドキドキが止まらない。

…きっと有名人に会えて舞い上がっているだけだ。