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1週間前ー
「なんか、最近SNSでの店の宣伝も限界感じてるんだよな。」
仕事帰りに寄る、行きつけのバーでマスターが言い出したことがこと始まりだった。
ツイッターもインスタグラムも宣伝として使っているのは知っている。まぁ、所謂キラキラ女子が上げるような映えとは少し…?遠いような写真がメインではあるが、それなりに素敵な写真だしなによりスタッフ同士の仲のいい写真、店の雰囲気もわかるような感じで私は好きだった。
「そうなんですよね〜、写真とかストーリーとかあげてもやっぱりなかなかインパクトないからなぁー。」
スタッフの一人のトシがマスターの声に同意する。
「私は今のままでも充分だと思うけどな。あんまり人が来すぎてマスター達と話せなくなるのやだもん。」
私は今のままの店も充分好きだ。このしっちゃかめっちゃかの中のマスターの人柄が出ている店が好きでもうかれこれ8年くらいはいついている。
…まぁ、売り上げがそこに比例しているのかはわからないが。
それでも常連同士は仲がいいし、このストレス社会で生きていくために私にとってはなくてはならない場所であるのは確かだった。
「まぁな。Aのいうこともわかるんだよなぁ。ただ俺が単純に新しいことをしたいっていうのもあるんだよなぁ。」
「お店とおうちの往復だ〜ってマスターこの前ぼやいてたんもんね。」
ハハハ…とマスターとトシと私で笑っているとバーのドアが開いた。
「よーっす。おつかれっすー。あれ、Aいんじゃん。」
「あれ、駿貴じゃん。なんか久しぶり?」
そう言って入ってきたのは私と同じくこの店の常連の須貝駿貴だった。
よくここで会ううちに話すようになり、同じ年だったり出身地が同じだったりと共通点が多く意気投合して今では2人で飲み明かすことも多々あるくらいの仲だ。
「ホントだな。マスター、俺来たのいつだっけ?」
「三周くらい前じゃないか?」
「駿貴さん!久しぶりですね!俺寂しかったです!」
「あ!モテる男は辛いね!さすが駿貴!」
「トシから好かれても嬉しくねぇわ!」
久しぶりに会った駿貴にテンションが上がった煩いトシを笑いながら私はジントニックに口をつけた。瞬間に頼んだビールが出てきた駿貴がこちらにグラスを傾けて来る。
「久しぶり、おつかれ。」
「ホント。寂しかったわ。」
「Aに言われるなら全然いいわ。」
「俺の扱い酷くないですか!?」
こうして今夜も更けていく。
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作者名:未果子 | 作成日時:2020年12月25日 1時