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watanabe side
「……なんで、別れたの」
気になってた質問をぶつけると、少し笑って視線を落とした。
「お互いに理解できないことが多くなっちゃったんだよね」
「理解できないこと?」
「うん、例えば亮平くんたちとの飲み会とか。私は友達も大切にしたいから行きたくて行ってたんだけど、北斗は男子がいるとこに私が行くの嫌だったみたい」
「…まあでもそれってよくあることじゃねえ?」
男女が逆の場合はよく聞く。
女友達と彼氏が飲みに行くのが嫌だとか、女のいる飲み会は無理だとか、今までに何度か彼氏持ちの女が言ってた記憶がある。
「そのことってより、それの根本の考え方っていうのかなあ。私は男子の友達、女子の友達、って分けてなくて、全部友達なの。でも北斗からすると男は男って考えだったから」
「うーん、よく分かんねえ」
「説明難しいや。笑」
「まあ、要するに男女の考え方の違いって感じ?」
「簡潔に言うとね。お互いに我慢してたんだけど、我慢してたらストレスは溜まっちゃうし、嫌なものは嫌だし。だからお互いのために別れた」
女って、別れた話する時って絶対泣くもんだと思ってたけど、目の前にいる彼女は悲しそうではあるものの少しも泣きそうな素振りを見せない。
仕方ないよね、と諦めた顔をして笑う。
「俺にはよく分かんねえけど、辛いには辛いでしょ」
「そりゃあね。でも別れが穏やかすぎて、上手く悲しむにも悲しめないし。時間が経って思い出になるのを待つしかないよね」
「達観してんな、あんた」
世の中の全てに期待してないような、諦めているような、そんな顔をされるとこっちまで悲しくなる。
悲しいなら悲しめばいいのに、と思うけど、それが出来ないと言われてしまうと何も言えない。
「ねえ、渡辺くんって私の名前呼ばないよね、私の名前分かる?笑」
いきなり変なことを言い出す彼女は、酔ってるんだか、素なのかすら分からない。
「いや分かるわ、A」
「…いきなり呼ばれると照れる」
俺の中では、同じ学部の北斗の彼女っていう認識だけの存在だったから、なんて呼んだらいいのか分からなかっただけ。
ふっかは、Aちゃんなんて呼んでるけど、俺はそんな呼び方するタイプでもねえし。
でも、最初はあんなに壁を感じるくらいの人見知りだった彼女とふたりで話してる現状を楽しんでる自分がいる。
なんか、こいつのペースに乗せられてる気がするんだけど。
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作者名:オユ | 作成日時:2021年2月24日 0時