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｢あーあー、運命の出会い無いかな〜｣
｢カナそれ何回目だよ、笑｣
酔いが回って同じことを何回も言うカナに照がツッコミを入れる。
カナはお酒が強いわけではないので、毎回こんな感じ。
｢阿部ちゃん〜今度はAの友達じゃない男子連れてきてえ！運命の出会いする！｣
｢今日連れてこられた俺の前で言うのかよ！わら｣
｢カナさんもう水飲みな｣
｢阿部辛辣、笑｣
前からの友達かのように深澤くんとやんややんやと言い合うカナの姿に思わず笑ってしまう。
深澤くんも酔いが回ってきたのか、テンションが高くて顔が火照っている。
｢ねえ、｣
｢あ、渡辺くん、なんか頼む？｣
｢そうじゃなくて｣
話しかけられ、咄嗟に注文かと思い、空になったグラスを揺らすとカラカラと氷の音が響く。
ここまで盛り上がってきたけど、まだちゃんと話してないんだよね。渡辺くんとは。
｢いや、あの、北斗と付き合ってる？｣
｢え？なんで知ってるの、笑｣
｢…バイト先、同じで仲良いから｣
北斗の名前に一瞬驚いたが、そんなに過剰に反応もしなかった。
掛け持ちしてるって言ってた居酒屋のバイトの方かぁ。
｢まあ別れちゃったけど！｣
｢え、え？まじ？｣
｢夏休みの最終日だったから〜、一週間前？｣
渡辺くんは感情が顔に出やすいのかな、ヤバいという感情が顔で全力で表現されている。
無神経なこと聞いちゃった、と思っているんだろうなあ。
そんなに気にしてくれなくてもいいんだけど。
｢そんなにやらかした、みたいな顔しないでよ、笑｣
｢いや、え、ごめん。でも長かったよね？｣
｢うん、高校の頃からだから…二年ちょっとくらい｣
高校の頃から、と復唱するように呟いて静かに驚く渡辺くん。
北斗には別れたことを報告されていないみたいだし、私に聞きたいことは沢山あるだろう。
現に今、渡辺くんの表情には、なんで別れたんだろう、でも聞くのも…という葛藤が見られる。
｢なんで別れたか聞く？楽しい話じゃないけど、笑｣
｢え？いいの？…話してて辛くならない？｣
｢逆にみんなが腫れ物みたいに扱ってくれるから、申し訳なくなっちゃって誰にも話せなくて｣
｢……そう、｣
少し心配そうに返事をした渡辺くんに人間味を感じた。
いや、人間だってのは分かってるけど、いつも寝てたり省エネな生活してるから。
渡辺くんは、意外に感情が豊かで顔に出やすい。
また、私の中で最初のイメージとのギャップが生まれた。
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作者名：オユ | 作成日時：2021年2月24日 0時
