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｢うわ！？｣
着替えて更衣室を出ると目の前に北斗。
どう考えても私を待ってたとしか思えない佇まい、私と目は合わせようとはしないけど。
｢…な、何｣
｢…もうひとつバイトやってるし、俺が辞めるよ｣
｢え？｣
それだけ告げて北斗は出勤のボタンを押して表へと出ていった。
付き合っていた2年という月日は伊達じゃない。私が今考えていたことも感じ取れてしまったんだろうな。
別れたのに、私を理解してくれている北斗の優しさは流石に苦しい。
北斗は居酒屋のバイトも掛け持ちしている。私はそれに比べ、今はここのバイトしかしていない。それを考えたら自分が辞めた方がいいと彼は思ったんだろう。
申し訳ないけど、他に掛け持ちをしていない私は彼の最後の優しさに甘えるしかない。
｢A〜、大丈夫？もう出れる？｣
｢あ、ごめん。奈子。すぐ行く｣
奈子が心配そうに扉から顔を覗かせた。
今日のシフトで一番気まずいのはきっと奈子。他の社員がいるとはいえ、アルバイトのメンバーは私と北斗と奈子。
元カップルとのシフトなんて奈子が一番気を遣うだろう。
帰りに奈子にアイス奢ろう、そう決めて出勤ボタンを押して表へと出た。
｢おはようございます！｣
｢おはようAちゃん、今日は金曜だから混むね〜｣
｢ですね、頑張ります！｣
優しいパートさんと幾つか言葉を交わして店内を見渡すと北斗と目が合い、すぐ逸らされる。
まあ、そりゃあそうか。見つめ合う方がおかしい。
｢A〜｣
｢あ、奈子。おつかれ｣
｢私、今から休憩なんだけど…大丈夫？｣
｢まあ仕事だし大丈夫。そんなに気遣われると逆にしんどいよ、笑｣
相変わらず心配そうな奈子に笑顔を見せてみるが、奈子の表情は晴れない。
大丈夫だってば、と笑いながら奈子の肩をバシバシ叩くと奈子も少し笑いながら痛いわ、と返してくれた。
｢…さっきね、松村くんにも言われたの。『あいつ気遣いすぎると逆に落ち込むからあんまり気にしないでやって』って｣
｢…そう。カッコつけてんね。笑｣
北斗のその気遣いこそが辛いんだけど。なんて、本人には言えないな。
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作者名：オユ | 作成日時：2021年2月24日 0時
