12 呪いって？！ ページ13
ハミングしながら、網の束をほぐしていたシノは、急に顔をこわばらせた。
ゆーっくり、見開いた目を、あたしへ向ける。
口は、あんぐりと、大きく開いて
いる。
ｼﾉ「ご、ご存知…ないのですね。
の・ろ・い・を…」
ｻﾄﾐ「呪い？何それ。それも、山下のおばさんから聞いてきたの？」
ｼﾉ「あっ…いや、それはその…あの」
んー？口ごもったりして、あやし
すぎ。
やっぱり、こいつ、何かおかしい。
ｼﾉ「8匹の犬の呪いについて、本当
に、何もご存知ないのですか」
ｻﾄﾐ「やめてよ、不気味だな」
ｼﾉ「8匹の犬の呪いが、次々と、お嬢様にふりかかると…!」
ｻﾄﾐ「やめてったら!」
あたしは、大声を上げた。今度は、
Aには、聞こえなかったみたいだけど、あんまりにも、あやしすぎる。
いきなり、知らない男の子が家に入りこんで、
あたしに抱きついて、
居間にガラクタをひろげて、
呪われているとかなんとか、とんでもない言いがかりをつけるなんて。
もう、頭にきた。
ｻﾄﾐ「出てって。それ全部
かたづけて、そこから出てって!」
ｼﾉ「そ、そうはいきません。ボクは山下家から正式に、つかわされて来たんですから」
ｻﾄﾐ「そんなの知らないよ。いいから早く、それ持って、ほら、ほら」
玄関まで行くのもめんどうくさくて、
あたしはシノを、台所の勝手口へと追いやった。
ｼﾉ「お、お嬢様、おねがいです」
ｻﾄﾐ「その『お嬢様』っていうのもやめてよね。あたし、サトミっていうんだから」
ｼﾉ「はい、わかりました、やめます!
だからどうか…あの」
追いつめられて、裏庭へ続くドアに背中をくっつけて、シノはあたしを見上げた。
ｼﾉ「あの、でも…、サトミ様」
はぁ…。
あたしは、深く、ため息をついた。
サトミ様、かよ。わざわざ、「様」はやめて、とまで言わねばならんのか。
ｻﾄﾐ「何よ」
ｼﾉ「お名前は、里見サトミ様…と、
うかがって来ましたが…」
ｻﾄﾐ「だから何よ」
ｼﾉ「あ。やっぱり。サトミ・サトミって…まちがいじゃ、ないん…ですね」
シノは、下を向いて、ボソボソつぶやいて、なっとくした。
ムッカー!
どうせ、里見サトミなんて、名字と名前がおんなじで、変な名前ですよ。
それをわざわざここで、
確認すんなー!
ｻﾄﾐ「出てって!」
あたしの怒りの声におびえたのか、
シノは、後ろ手でドアを開け、
裏庭へ、あとずさった。
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作者名：ミクシィ | 作成日時：2014年11月3日 7時
