藍沢先生。3 (ページ9)

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ＩＣＵの一角に冴島が入った。

その隣には、秋元二郎が入った。

「脳実質の腫れが強い。」

「..植物状態になる可能性もあるってことだろ？..なんでだろうなぁ、今日に限って全部青だったんだよ」

「..」

「信号。いつも車で通勤してる道の。俺たちその時間だけなんだよ。二人で、落ち着いて話せるの。だから今日、話そうと思ってたんだよ、そこで。」

「なのに今日に限って、全部青信号でさぁ、スイスイ行けちゃうんだよ。どう切り出そう、って思ってるうちに病院着いちゃって..」

「ひとつでも、どっか赤だったら..、俺言えてたと思うんだ。..お腹の子のために、ヘリ降りてほしいって..」

藤川の言葉に、俺の頭に過去の記憶がよみがえる。

俺も同じようなことがあった。

しかし、俺は藤川に何も言ってやることができず、黙り込んでしまった。

そんな沈黙を破るかのように、隣のベッドから雪村の「秋元さん、」と呼びかける声が聞こえた。

「..藍沢先生、秋元さん、意識回復しています」

俺は、その声に患者の元へ行き瞳孔をみた。

「吐しゃ物の中にカプセルが残ってた。完全に溶けきる前に、吐き出したのが幸いした。」

隣から、「なんで..」と藤川の声が聞こえた。

しかし、彼の奥さんが来て結局俺は一言も声をかけてやることもできなかった。